エレベーターを怖がる子の気持ちと、そう感じる理由
こんにちは!おやまどの鈴木です。
ショッピングモールやマンションで、「エレベーターに乗るよ」と声をかけたとたん、エレベーターを怖がる子が足をとめて、ぎゅっとしがみついてくる。泣き出して、乗ることをいやがる。そんな場面に、戸惑った経験のある方は少なくないのではないでしょうか。
この記事では、エレベーターを怖がる子の気持ちと、そう感じやすい理由、家庭でできる工夫を、順番にまとめました。「わがまま」と決めつけず、子どもの感じ方に目を向けるヒントとして読んでいただければうれしいです。
エレベーターを怖がる子が、閉じた空間に不安を感じるとき

エレベーターは、小さな箱のような空間です。扉が閉まると、外の様子が見えなくなります。大人にとっては当たり前の乗り物でも、子どもにとっては「ここから出られないかもしれない」と感じる場所になることがあります。
とくに、行き先が自分で決められないところは、大きなポイントです。いつ動くのか、どこで止まるのかが見えないので、不安が強くなりやすいと言われています。
たとえば、まわりに知らない大人が何人も乗っていると、距離の近さにも緊張しやすくなります。「怖い」の中身は、空間の狭さだけでなく、人の近さや、先の見えなさなど、いくつかが重なっているということもあります。
また、エレベーターの中は、逃げ場がないと感じやすい場所でもあります。ほかの場所なら「いや」と思ったときに離れられますが、箱の中ではそれができません。この「離れられない」という感覚が、不安をいっそう大きくすることもあります。
よくある例として、前に一度、扉が開くまでに時間がかかった経験があると、それが強く記憶に残って、次から乗るのをいやがるようになる、ということもあります。

エレベーターなんて、乗ればすぐなのに…。どうして、そんなに怖いんだろう。

大人の「すぐ」は、子どもには「いつ終わるかわからない時間」かもしれないわん。その不安を、まず受けとめてあげたいわん。
エレベーターを怖がる子が、音やゆれ、浮く感じにおどろくとき

エレベーターには、独特の音とゆれがあります。扉が開くときの「ポーン」という音、モーターの低い音、動きはじめと止まるときの、ふわっとした感覚。こうしたものに敏感な子は、体全体で「いつもと違う」と感じとることがあります。
とくに、上に動くときの重さや、下に動くときの「浮くような感じ」は、大人でも苦手な方がいる感覚です。子どもは、それをうまく言葉にできないので、「いや!」「こわい!」という形で表すことがあります。
感じ方には個人差があり、同じ音でも気にならない子もいれば、耳をふさぐ子もいます。「みんなが平気なものを、うちの子だけ怖がる」と考えず、「この子にはこう感じられているのかもしれない」と考えてみると、見え方が変わることがあります。

音とかゆれとか、わたしは気にしたことなかったなあ。そんなに感じ方が違うのね。

そうなんだわん。大人には「ふつう」でも、子どもには「大きな出来事」ということもあるわん。まずは、そう感じているんだな、と知るところからだわん。
エレベーターを怖がる子が、扉の開閉や「はさまれる不安」を感じるとき

扉が勢いよく閉まる様子に、おびえる子もいます。「はさまれたらどうしよう」「置いていかれたらどうしよう」と、想像がふくらんでしまうのです。
また、ボタンの前に立つ人が決まっていて、自分では何もできないことも、不安につながります。扉が閉まる前に降りられなかったらどうなるのか、親と離れてしまったら、といった心配が、頭の中をぐるぐるすることもあります。
原因をひとつに決めつけず、「どこが一番いやなのかな」と、本人の様子から探っていく気持ちで向き合ってみてください。
たとえば、扉が閉まる瞬間に耳をふさぐなら「音」が、動きはじめに身体を固くするなら「ゆれ」が、親の手をはなさないなら「はなれる不安」が、気になっているのかもしれません。もちろん、あくまで目安のひとつです。
子どもが話せる年齢なら、「どこがいやだった?」と聞くより、「大きい音がしたね」「ふわっとしたね」と、気持ちを代わりに言葉にしてあげる方法があります。聞かれて答えるより、言い当てられて「そう!」と感じるほうが、話しやすい子もいます。
エレベーターを怖がる子が、特に困りやすい場面
エレベーターを怖がる子は、日常のいろいろな場面で、困りごとにぶつかります。ここでは、とくに起こりやすい場面を見ていきます。
商業施設や駅で、エレベーターを怖がる子と移動に困るとき

ベビーカーを使っているとき、荷物が多いとき、フロアが何階もあるときは、エレベーターが一番楽な移動手段です。ですが、そんなときに限って、子どもが乗ることをいやがる。ここで保護者の方は、板挟みになりやすいものです。
周囲の目も気になります。後ろに人が並んでいたり、扉が開いたまま待たせてしまったりすると、焦りや申しわけなさがこみあげてきますよね。
そんなとき、保護者の方の心の中には、「早くしなきゃ」という気持ちと、「無理に乗せたくない」という気持ちがぶつかります。どちらも、子どものことを思うからこその気持ちです。
そんなときは、いったん「今日は階段にしよう」「次の便を待とう」と、場所を譲る選択肢もあります。無理に乗せようとすると、その場所そのものが怖い記憶になってしまうことがあるからです。
エレベーターが混んでいる時間帯を避けるだけでも、気持ちが楽になる子もいます。人が少なければ、距離の近さによる緊張がへって、乗りやすくなることがあります。
マンションの毎日の出入りで、エレベーターを怖がる子がいるとき

たまに乗る商業施設と違い、マンション住まいだと、エレベーターは毎日の出入りに欠かせません。朝の登園・登校の時間帯に「乗りたくない」と言われると、時間も気持ちも追いつめられやすくなります。
このような場面では、「毎日のことだから、早く慣れてほしい」という気持ちが強くなりがちです。でも、毎日のことだからこそ、親子で無理をしすぎない工夫が大切になります。
たとえば、朝は時間に余裕をもたせて、階段を使う日があってもよいと考えてみる方法があります。エレベーターに乗るかどうかより、「親子で気持ちよく一日をはじめられるか」を優先する、という考え方もあります。
夕方の帰り道など、時間に余裕のあるときに、「今日はエレベーターで帰ってみようか」と誘ってみる方法もあります。急いでいないときのほうが、子どもも保護者も、気持ちに余裕をもって向き合いやすいものです。

毎朝バタバタしてるのに、エレベーターの前で動かなくなるとほんとに困っちゃう…。

気持ちはよくわかるわん。そんな日は「今日は階段で行こう」と切り替えてもいいわん。ゆっくり慣れる道は、ひとつじゃないわん。
エレベーターを怖がる子と一緒にできる、家庭での工夫
エレベーターを怖がる子には、「慣れさせる」より先に、「安心できる材料を増やす」ことが役に立つ場合があります。家庭でできる工夫を、いくつか紹介します。
エレベーターを怖がる子に、見通しを伝える声かけ

不安の大きな理由のひとつは「先が見えないこと」です。乗る前に、次のような見通しを伝えてみる方法があります。
見通しを伝える声かけの例
・「あの扉が開いて、乗るよ」
・「3階で降りるよ。ボタンが光ったら着くよ」
・「扉が開いたら、すぐ出られるよ」
・「ママ(パパ)は、ずっと隣にいるよ」
短い言葉で、順番に伝えるのがコツです。「もうすぐ着くよ」などの声かけは、終わりが見える安心につながると言われています。
ただ、お子さんによっては、説明が多すぎると、かえって意識してしまうこともあります。反応を見ながら、その子に合う量を探してみてください。
エレベーターの絵本や、乗り物の図鑑で、仕組みを一緒に見ておく方法もあります。扉が開いて、箱が動いて、また扉が開く。その流れを知っておくと、「何が起きるかわからない」という不安が小さくなることがあります。
エレベーターを怖がる子に「ボタン係」をお願いしてみる

自分でボタンを押せると、「自分で動かしている」という感覚が生まれて、不安がやわらぐ子もいます。行き先の階のボタンを押す係や、「開く」ボタンを押す係をお願いする方法です。
エレベーターが苦手な子にとって、「自分にもできることがある」というのは、大きな支えになります。乗るのをいやがっていても、ボタンを押すだけなら、できることもあります。
注意したいのは、押す役目を「やらなければならないこと」にしないことです。その日の気分で、「今日はお願いしていい?」と聞いてみる、くらいの軽さがちょうどよいかもしれません。
「押したい!」と手をのばすようになったら、小さな前進です。ボタンの高さに届かないときは、抱っこして押させてあげてもよいでしょう。
エレベーターを怖がる子と、少しずつ慣れていくための練習

慣れる練習をするときは、「乗れた・乗れない」で測らないのがおすすめです。たとえば、次のような小さな段階が考えられます。
小さな段階の例
・エレベーターの外から、扉が開いたり閉まったりする様子を一緒に見る
・扉が開いている間に、足を一歩だけ入れてみる
・1階分だけ乗って、すぐ降りてみる
・慣れてきたら、少しずつ階を増やしてみる
どの段階でも、本人が「やだ」と言ったら、そこでやめて大丈夫です。今日ここまでできた、ということを一緒に喜んで、次の機会にまた試してみる、というペースが合う子もいます。
練習は、親子の気持ちに余裕のある日に、短い時間で行うのがおすすめです。疲れている日や、予定がつまっている日は、お休みにして大丈夫です。
また、おもちゃや絵本で、エレベーターごっこをしてみる方法もあります。積み木の箱に人形を乗せて、「3階です」「扉が開きます」と遊ぶうちに、仕組みが身近に感じられる子もいます。
練習のたびに「できるようになった?」と確かめるのは控えて、「今日は見るだけにしようか」と、軽い気持ちで取り組んでみてください。

少しずつなら、わたしも気がラクかも。でも、つい「もう乗れるよね?」って聞いちゃいそう…えへへ。

気持ちはわかるわん。でも、期待を口にしないでいると、子どもも気がラクになるわん。「見るだけ」でも大成功だわん。
エレベーターを怖がる子への接し方と、周りの人への伝え方
エレベーターを怖がる子と過ごすときは、家庭だけでなく、園や学校、外出先でも、周囲との関わりが出てきます。
エレベーターを怖がる子を、急かさない・比べない

「みんな乗れているのに」「お兄ちゃんは平気だったのに」といった言葉は、子ども自身を責められているように感じさせてしまうことがあります。ついこぼれてしまうのは、保護者の方も疲れているからです。
もし言ってしまったとしても、自分を責めすぎないでくださいね。気づいたときに、「さっきは焦ってごめんね」と声をかけるだけでも、子どもは安心できます。
比べる相手は、ほかの子ではなく、「去年のこの子」や「昨日のこの子」です。小さな変化に気づいて、言葉にして伝えてあげることが、自信につながっていきます。
たとえば、前は扉の近くで立ちすくんでいた子が、今日は扉が開くまで待てた。それだけでも、立派な変化です。変化に気づいたら、「待てたね」と短く言葉にしてみてください。
エレベーターを怖がる子について、園や周囲に伝えるとき

園や学校の行事で、エレベーターを使う場面があるときは、先生に事前に伝えておく方法があります。「エレベーターが少し苦手で、階段なら大丈夫です」と、具体的に伝えると、先生も対応しやすくなります。
外出先でも、「この子は乗るのが苦手で」と一言添えるだけで、周囲の方が譲ってくれることもあります。説明が難しいときは、無理に説明せず、「ゆっくり行きますね」と声をかけるだけでも十分です。
きょうだいや祖父母と一緒に出かけるときも、同じです。「エレベーターは、今この子のペースで進めているところ」と共有しておくと、周りの大人の声かけがそろって、子どもも安心しやすくなります。
同じような「怖がる」場面は、ほかにもあります。エスカレーターについては、こちらの記事でも取り上げています。

音に関わる場面については、こちらの記事も読んでみてください。

まとめ:エレベーターを怖がる子と、ゆっくり進んでいく
エレベーターを怖がる子の気持ちを、まるごと受けとめる

エレベーターを怖がる子の気持ちには、いろいろな背景があります。狭さ、音、ゆれ、扉、人の近さ。何が怖いのかは、子どもによって違います。
大切なのは、「怖い」という気持ちをまず受けとめることです。「大丈夫だよ」と言い聞かせる前に、「怖いんだね」と、そのまま言葉にしてあげる。それだけで、子どもの表情がやわらぐことがあります。
そのうえで、見通しを伝える、ボタン係をお願いする、階段を選ぶ、といった工夫を、ご家庭に合う形で取り入れてみてください。
「怖い」は、大切な子どもの気持ちの表れです。怖がることそのものが、悪いことではありません。慎重に周りを感じとっている、と見ることもできます。
今日からできる小さなヒント
・乗る前に、「何階で降りるか」を短く伝える
・ボタンを押す係を、気分に合わせてお願いしてみる
・無理だと感じた日は、階段や次の便を選ぶ
・できたことを、具体的な言葉でほめる
どれも、全部やる必要はありません。ひとつだけ、試してみるところからで十分です。
一人で抱え込まず、エレベーターを怖がる子と一緒に進む

「うちの子だけ、こんなに怖がるのかな」と、不安になる日もあるかもしれません。でも、エレベーターを怖がる子は、決して少なくありません。同じように悩んでいる保護者の方は、たくさんいます。
子どもの「怖い」は、成長とともに、少しずつ変わっていくこともあります。今日乗れなくても、半年後には自分からボタンを押している、というお子さんもいます。
もちろん、変化のスピードは一人ひとり違います。「いつまでに乗れるようにならなければ」と思いつめる必要はありません。
焦らず、比べず、そのときのお子さんのペースに合わせて。親子でゆっくり、一歩ずつ進んでいきましょう。
アイキャッチ画像:Photo by Michael Morse on Pexels


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