鍵盤ハーモニカが苦手な子の気持ちと、つまずきやすい場面
こんにちは!おやまどの鈴木です。
小学校の音楽の時間に登場する楽器といえば、鍵盤ハーモニカです。音楽会や発表に向けて練習が増える秋は、「うちの子は鍵盤ハーモニカが苦手で、家で練習しようと言うと嫌がる」「指が思うように動かなくて、途中で投げ出してしまう」といった声が聞かれる季節でもあります。どう声をかければよいのか迷っている保護者の方もいるのではないでしょうか。
この記事では、鍵盤ハーモニカが苦手な子どもの気持ちや背景、ご家庭でできる関わり方を、やさしい言葉で整理していきます。「うちの子だけ?」と感じているときの、ひと息つくきっかけになればうれしいです。
鍵盤ハーモニカが苦手な子の中には、音楽そのものが嫌いなわけではなく、「みんなの前で間違えるのが恥ずかしい」「うまく吹けない自分を見せたくない」という気持ちが、手を止めてしまう原因になっている子もいます。周りの子と見比べて、気持ちが小さくなってしまうこともあります。
まずは、いつから鍵盤ハーモニカを避けるようになったのか、どんな場面で手が止まるのかを、日々のやりとりの中でさりげなく見てみてください。原因を決めつけず、お子さんの様子をていねいに集めることが、関わり方のヒントになります。
鍵盤ハーモニカは、学校で一斉に練習する場面が多い楽器です。ほかの子の演奏を聞くと、「自分だけできていない」と感じやすい環境でもあります。苦手という気持ちが強まる時期があるのは、周りがよく見える年ごろだからこそ、と考えると、見方が少し変わるかもしれません。
指が思うように動かない、というもどかしさ

鍵盤ハーモニカが苦手な子の多くが抱えているのが、「頭では分かっているのに、指が追いつかない」というもどかしさです。ドの位置は分かっていても、次のレに指を動かすタイミングが遅れてしまう。そんな場面では、子ども自身がいちばんくやしい思いをしています。
指を一本ずつ、別々に動かすという動きは、実はとても細かい作業です。手先の動かし方には個人差があり、指の動きがなめらかになるまでの時間も一人ひとりちがうと言われています。早くできる子と比べて焦る必要はありません。
よくある例として、右手の親指だけで鍵盤を押してしまう、ほかの指を使うように言われると手が止まる、指の番号が混ざって弾く場所が分からなくなる、といった場面があります。これらは、やる気がないのではなく、指の使い方をまだ体がつかんでいないサインということもあります。

ほのママ:うちの子、鍵盤ハーモニカの練習になると、すぐ「できない」って言うのよね…。やる気がないのかしら。

それは違うわん!「できない」の裏には、「思うように指が動かなくて悔しい」気持ちがかくれていることもあるわん。まずは気持ちを聞いてあげるわん。
お子さんが手を止めたときは、「どこがむずかしかった?」と、責めない口調で聞いてみてください。「指がぐちゃぐちゃになる」「どの指か分からなくなる」など、具体的な言葉が出てくることもあります。言葉にするのがむずかしい子には、「ここ?それともここ?」と選べる形で聞くのも一つの方法です。
また、練習の時間が長いと、疲れて集中力が続かなくなる子もいます。「今日は右手だけ」「今日はドレミだけ」と、その日のゴールを小さくしておくと、気持ちの負担が軽くなります。
息を吹きこみながら弾くのがむずかしい

鍵盤ハーモニカは、ふきこむ息の強さで音の大きさや響きが変わる楽器です。強すぎると音が割れ、弱すぎると音が出ません。この「ちょうどよい息」をつかむまでに、時間がかかる子もいます。
指を動かしながら息のことも考えるのは、同時に二つのことをする作業です。指に集中すると息が止まり、息に集中すると指が止まる、という子もめずらしくありません。これは、集中していないのではなく、二つのことを一度にこなす練習の途中にあると考えてみてください。
たとえば、息を強くふきこみすぎて「ブー」という大きな音が出てしまい、びっくりして吹くのをやめる、音がかすれて出ないことに焦る、息が続かなくて途中で苦しくなる、といった場面があります。うまくいかない経験が続くと、鍵盤ハーモニカそのものが苦手になってしまうこともあります。
息の練習は、鍵盤ハーモニカを使わなくてもできます。ストローでコップの水をぶくぶくふく、ティッシュを息でゆらす、シャボン玉をふくなど、遊びの延長で息の強弱を楽しむ方法があります。「練習」と思わせず、楽しい時間にすることがポイントです。
また、ホース(吹き口)に慣れるまでは、唇が疲れたり、よだれが気になったりする子もいます。感覚の感じ方には個人差があるため、気になる点を一緒に確かめながら、無理のない範囲で慣らしていくとよいでしょう。
鍵盤ハーモニカが苦手になる背景をひもとく
鍵盤ハーモニカが苦手に感じる背景には、いくつかの要素が重なっていることがあります。ここでは、保護者の方がよく気にされる2つの切り口から見ていきます。
鍵盤の位置や音の名前が分かりにくい

鍵盤ハーモニカには、白い鍵盤と黒い鍵盤が、決まった並びでたくさんついています。慣れた人にとっては見慣れた並びでも、はじめて向き合う子にとっては、どこがドで、どこがレなのかを探すだけでも大変な作業です。
楽譜の音符と、鍵盤の位置と、指の番号。この三つを頭の中で結びつけながら弾くのは、とても複雑な活動です。どれか一つでもあいまいだと、手が止まってしまいます。これは、センスの問題ではなく、「つなげ方」がまだ見つかっていないだけということもあります。
よくある例として、楽譜を見るたびに鍵盤を探し直す、ドの位置をまちがえて全体の音がずれる、黒鍵と白鍵の区別があいまいになる、といった場面があります。ご家庭では、「ドはこの黒い鍵盤が2つ並んだ左側だよ」と、目印を一緒に確かめてみてください。

ほのママ:鍵盤の位置を覚えるのって、そんなに大変なことだったのね…。わたし、てっきりすぐ分かるものだと思ってた、えへへ。

気づけたのは大きな一歩わん!「どこがド?」と探す時間も、大事な練習のひとつわん。ゆっくり一緒に探してみるわん。
お子さんの教材に、鍵盤の位置や音の名前がシールで貼られていることもあります。家庭でも、小さなシールや、マスキングテープで目印をつけるなど、見て分かりやすくする工夫があります。目印があるだけで、安心して取り組める子もいます。
覚えるのがむずかしいときは、ドレミの歌や、お子さんの好きな曲の一部から始めるのもおすすめです。「知っているメロディーを自分で鳴らせた」という経験は、鍵盤を覚える気持ちを後押ししてくれます。
楽譜を読みながら弾くことが負担に感じる

楽譜を読むというのは、音符の高さ、長さ、休符、記号などを同時に読み取る作業です。さらに、それを指の動きに変えていくとなると、頭の中でとても多くの情報を扱っています。情報を整理する速さには個人差があるため、楽譜を見るだけで疲れてしまう子もいます。
文字を読むのが得意な子でも、音符になるとむずかしく感じることがあります。楽譜は、行を追うだけでなく、上下の位置の変化や、小節の区切りも見る必要があるためです。目が追いつかず、どこを弾いているのか分からなくなる子もいます。
たとえば、楽譜の行の途中で見失ってしまう、休符を飛ばして弾いてしまう、リズムが分からず走ってしまう、といった様子が見られることがあります。「ちゃんと見て」と言われるほど、焦ってしまう子もいるようです。
耳で聞いて覚えるのが得意な子もいます。そんなときは、お手本の音を聞いてから真似して弾く方法もあります。楽譜を見て弾くことだけが正解ではなく、その子に合った覚え方を見つけることが、鍵盤ハーモニカを楽しむ近道になることもあります。
学校の先生に相談できる場合は、「楽譜を目で追うのが大変そうです」と、具体的に伝えておくのも一つの方法です。楽譜に印をつけることを認めてもらえたり、練習の進め方を工夫してもらえたりすることもあります。

同じように学校で使う楽器については、リコーダーが苦手な子の記事でも取り上げています。苦手の理由を一緒に整理するヒントになるかもしれません。
鍵盤ハーモニカが苦手な子への、家庭での関わり方
鍵盤ハーモニカが苦手な子には、「上手に弾かせる」ことよりも、「安心して取り組める環境をつくる」ことが大切だと言われています。ご家庭で取り入れやすい工夫を見ていきましょう。
小さなステップに分けて、できたことを数える

鍵盤ハーモニカの練習は、曲を最初から最後まで通して弾こうとしないことが、苦手意識をやわらげる大きなコツです。まずは、「ドだけ」「ドとレだけ」と、ごく小さなステップに区切って取り組む方法があります。
たとえば、「今日は右手の親指でドをふいてみる」「次は、ドからレに指を移す」など、ひとつの動きだけに集中します。できたことを「ドが出たね」「息の強さがちょうどよかったね」と言葉にして伝えると、小さな自信が積み重なっていきます。
練習は、5分から10分ほどの短い時間で十分です。長時間やるよりも、楽しい気持ちで終えることのほうが、次の練習につながりやすくなります。「今日はここまでにしよう」と区切ることも、安心につながります。

ほのママ:曲を全部弾かせようとして、毎回ぐったりさせちゃってたわ…。ドだけでもいいのね!えへへ。

そのとおりわん!小さな「できた」を一緒に数えることが、いちばんの近道わん。親子で楽しむことを大切にするわん。
お子さんの好きな曲を選んで、簡単な部分だけ弾いてみる方法もあります。アニメの主題歌や、童謡など、聞き慣れたメロディーは、音を探す手がかりになります。完璧に弾けなくても、「あの曲だ」と分かるだけで、うれしい気持ちになる子もいます。
また、保護者の方が一緒に鍵盤を触ってみるのも、気持ちがほぐれるきっかけになります。間違えて「えへへ」と笑う姿を見せると、「間違えてもいいんだ」と感じる子もいます。
音楽を楽しむ時間を、練習以外にも持つ

鍵盤ハーモニカへの苦手意識をやわらげるには、練習ではなく「音で遊ぶ時間」をつくることも役立ちます。上手に弾くことを目的にせず、鳴らして楽しむ体験を重ねることで、楽器への気持ちが少しずつ変わっていく子もいます。
たとえば、家にあるハンドベルやタンバリン、おもちゃの楽器を一緒に鳴らす、好きな曲に合わせて手拍子をする、リズムあそびをする、といった時間があります。「音を出す楽しさ」を感じることが、鍵盤ハーモニカへの興味にもつながります。
道具も、お子さんが使いやすいものを選ぶと、取り組みやすくなります。吹き口のホースの長さを調整する、鍵盤に目印のシールをつける、楽譜の見やすい場所に立てかけるなど、小さな工夫が「できた」の数をふやします。
音楽の時間が楽しいと感じられると、練習の気持ちもぐっと軽くなります。家族でお気に入りの曲を聞く、歌を歌う、といった時間も、音楽との距離を縮める大事なひとときです。
もし、お子さんが「今日は弾きたくない」と言った日は、無理に続けず、お休みする日にしてもかまいません。そっと見守る時間も、また弾きたくなる気持ちを育てます。

音楽会に向けた楽器の練習が気になるときは、こちらの記事も参考になります。練習の進め方を、別の視点から見てみてください。
まとめ:鍵盤ハーモニカが苦手な子と、あせらず向き合う
鍵盤ハーモニカが苦手な気持ちは、その子なりの理由から生まれます

鍵盤ハーモニカが苦手に感じる背景には、「指が思うように動かない」「息の調整がむずかしい」「鍵盤の位置が分かりにくい」「楽譜を読みながら弾くのが負担」など、さまざまな理由があると言われています。どれも、その子なりにがんばっているからこそ生まれる気持ちです。
音楽は、人前で演奏する機会があるぶん、周りの子と比べやすい教科でもあります。発表の場面が近づくと、保護者の方も焦りを感じるかもしれません。ただ、「苦手」と感じていても、それがお子さんの価値を決めるものではありません。
保護者の方も、「このまま苦手意識がついたらどうしよう」と不安になることがあるかもしれません。そんなときは、ひとりで抱え込まず、先生や、同じ年ごろのお子さんをもつ保護者の方と話してみてください。「うちもそうだよ」と聞くだけで、気持ちが軽くなることもあります。
鍵盤ハーモニカは、成長とともに指の動きに慣れ、ある日ふっとなめらかに弾けるようになる子も多い楽器です。今の姿だけで、これからのことが決まるわけではありません。
今日からできる、小さな一歩

今日からできる一歩として、お子さんが鳴らした音を、うまい下手で評価せずに「聞かせてくれてありがとう」と受け取ることから始めてみてはいかがでしょうか。「上手か下手か」ではなく、「音を出した気持ち」を大切にするだけで、お子さんの表情が変わることがあります。
学校での様子が気になるときは、連絡帳や個人面談で、先生に「音楽の時間はどんな様子ですか」と聞いてみる方法もあります。家での様子と学校での様子を共有すると、お互いに関わり方のヒントを得やすくなります。
ひと息つくためのチェックポイント
・鍵盤ハーモニカが苦手な理由は、一人ひとりちがうと受け止める
・曲を通して弾かず、ドだけなど小さなステップから始める
・息の強さは、遊びの中でも練習できる
・目印のシールなど、見やすく分かりやすい環境を整える

ほのママ:鍵盤ハーモニカが苦手でも、ちゃんと理由があるのね。うちの子の「できない」も、ゆっくり聞いてみるわ。

その調子わん!大丈夫、一緒に考えるわん。お子さんのペースで、少しずつ鍵盤ハーモニカとの距離が近づいていくわん。
お子さんの「好き」や「得意」は、音楽の外にもたくさんあるはずです。鍵盤ハーモニカが苦手でも、お絵かき、虫とり、おしゃべりなど、お子さんが得意な場面を、ぜひたくさん見つけてあげてください。
アイキャッチ画像:Photo by cottonbro studio on Pexels



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