「運動会の練習、行きたくない」
朝、玄関でそう言われて、どう返せばいいか迷ってしまう。
9月から10月は、園や学校で運動会の練習が本格的に始まる時期です。
練習を嫌がる子どもの姿に、「うちの子だけ?」と不安になる方も多いのではないでしょうか。
先生から「練習に参加できていません」と言われると、胸がぎゅっとなりますよね。
本番まであと少しなのに、このままで大丈夫なのかな、と焦る気持ちも出てきます。
この記事では、運動会の練習を嫌がる理由と、家でできる関わり方、そして当日の考え方をまとめました。
練習を嫌がるわが子を前に、どう声をかければいいか迷っている方の参考になればうれしいです。
運動会は、子どもにとっても親にとっても特別な行事です。
だからこそ、うまくいかないときのしんどさも大きくなりがちです。
この記事でわかること
・運動会の練習を嫌がる、よくある理由
・家でできる声かけと、当日の流れの伝え方
・本番で嫌がったときの、無理のない考え方
運動会の練習を嫌がるのはなぜ?
こんにちは!おやまどの鈴木です。
運動会の練習を嫌がる子どもは、実はめずらしくありません。
ふだんは元気に園や学校へ通っている子でも、この時期だけ行き渋ることがあります。
「体を動かすのが嫌い」だけが理由とは限りません。
運動会の練習には、ふだんの生活とはちがう負担がいくつも重なっているからです。
練習の期間は数週間続くことも多く、毎日の積み重ねで疲れがたまりやすい時期でもあります。
まずは、よくある理由を2つに分けて見ていきましょう。
大きな音や、いつもと違う流れがしんどい

運動会の練習では、ふだんの園や学校ではあまりない刺激が続きます。
スタートの合図の音、スピーカーから流れる大きな音楽、たくさんの子が一斉に動く校庭。
大人にとっては「にぎやかだな」くらいでも、音に敏感な子には強い刺激になることがあります。
さらに、練習の時期は時間割が変わりやすくなります。
「今日は朝から外で練習」「雨だから体育館」と、予定がころころ変わるのも、この時期の特徴です。
先の見通しが立ちにくいと、それだけで不安が大きくなる子もいます。
見通しとは、「このあと何が起きるか」が分かっている状態のことです。
運動会の練習では、いつもの教室ではなく校庭や体育館に移動することも増えます。
場所が変わるだけで、落ち着かなくなる子もいます。
また、帽子をかぶる、体操服に着がえる、並んで待つといった細かい決まりごとも一気に増えます。
一つひとつは小さなことでも、重なると大きな負担に感じられることがあります。
こうした負担は目に見えにくいぶん、まわりの大人にも気づかれにくいものです。
「みんなやっているから大丈夫」と思われやすいところも、しんどさにつながります。
とくに、まじめで決まりを守ろうとする子ほど、全部をきちんとこなそうとして疲れてしまうことがあります。
音と予定の変化、この2つが重なると、「なんとなく行きたくない」という形で気持ちが出てくることがあります。
本人も理由をうまく言葉にできないことが多いので、「なんで?」と聞いても答えが返ってこないのは自然なことです。

わたし、てっきり「かけっこが遅いから嫌なのかな」って思ってた…。音がつらいなんて考えたこともなかったよ〜。

理由はひとつじゃないことが多いんだわん!走るのが苦手な子もいれば、音や人の多さがしんどい子もいる。まずは「何が嫌なのか」を一緒に探すところからだわん。
音や感覚の敏感さについては、こちらの記事でもくわしく取り上げています。

「できない姿」を見られるのが不安

運動会の練習は、みんなの前で何かをする時間がとても多くなります。
かけっこで順番がつく。ダンスで振りつけをまちがえると目立つ。
「うまくできないところを見られたくない」という気持ちが、練習への足を重くすることがあります。
とくに、まわりの子と自分を比べられるようになってくる年ごろは、この気持ちが強く出やすいと言われています。
がんばり屋さんの子ほど、「失敗したくない」という思いが大きくなることもあります。
また、練習では「もう一回」「そろえて」と、何度も同じことをくり返します。
終わりが見えないくり返しは、集中が続きにくい子にとってはかなりの負担です。
練習のたびに先生から声をかけられることを、「注意された」と受け取ってしまう子もいます。
先生にとっては応援のつもりの声かけでも、本人には「またできなかった」と感じられることがあるのです。
家では元気なのに、練習の話になると急に黙る。
そんな様子があるときは、「見られること」や「比べられること」がしんどいのかもしれません。
こうした気持ちは、大人にも覚えがあるのではないでしょうか。
人前で何かをするときに緊張するのは、子どもも大人も同じです。
嫌がる理由が「怠けたいから」とは限りません。
不安や疲れが、「嫌だ」という言葉になって出ているという見方もできます。
運動会の練習を嫌がる子に、家でできる関わり方
理由が少し見えてきたら、次は家でできることです。
大切なのは、練習に行かせることよりも、子どもの気持ちが少し軽くなることです。
ここでは、今日から家で試せることを2つ紹介します。
どちらも、特別な道具はいりません。
「嫌だ」の中身を、短い言葉で聞いてみる

「どうして嫌なの?」と聞いても、答えが返ってこないことはよくあります。
自分の気持ちを言葉にするのは、子どもにとって簡単ではないからです。
そんなときは、答えやすい形で聞いてみるのがおすすめです。
「音が大きいのが嫌?」
「かけっこが嫌?」
「ダンスが嫌?」
選べる形にすると、うなずくだけで答えられます。
当たっていなくても、「ちがう」と言えたこと自体が、気持ちを整理する一歩になります。
聞くタイミングも大切です。
朝の忙しい時間より、お風呂のあとや寝る前など、ゆったりした時間のほうが話しやすくなります。
たとえば、寝る前に「今日の練習、どれがいちばん疲れた?」と聞いてみる方法があります。
責める雰囲気がないと、子どものほうからぽつりと話し出すこともあります。
話してくれたことには、まず「そうだったんだね」と受け止めるだけで大丈夫です。
すぐに「でも練習は大事だよ」と返したくなりますが、先に気持ちを受け止めてもらえると、子どもは安心して次の話ができるようになります。
話してくれない日が続いても、焦らなくて大丈夫です。
「話したくなったら、いつでも聞くよ」と伝えておくだけで、子どもにとっては十分な安心材料になります。
聞き出そうとがんばりすぎると、子どもも身がまえてしまいます。
親のほうが「今日は聞けなくてもいいや」くらいの気持ちでいると、自然と会話が生まれやすくなります。
当日の流れを、絵や写真で先に見せておく

不安の大きな理由のひとつが、「何が起きるか分からない」ことです。
それなら、先に流れを見せてあげると安心につながりやすくなります。
園や学校からプログラムが配られたら、一緒に見てみましょう。
「最初に入場して、次がかけっこ、そのあとお昼ごはん」と、順番に話していきます。
文字だけで分かりにくいときは、紙に簡単な絵をかくのもひとつです。
丸や線だけでも、「今ここ」「次はこれ」が目で分かると、見通しが持ちやすくなります。
絵をかくときは、子どもと一緒に色をぬったり、好きな種目に印をつけたりするのもおすすめです。
自分で手を動かすと、当日の流れがより頭に残りやすくなります。
スタートの合図が苦手な子には、「パンって大きな音が鳴るよ」と前もって伝えておくだけでも、驚きがやわらぐことがあります。
ほかの園や学校の運動会の様子を、動画で一緒に見てみるのもひとつの方法です。
「こんなふうに走るんだね」「音楽が流れるね」と話しながら見ることで、当日の雰囲気を前もって知ることができます。
当日の朝は、「お昼はお弁当を一緒に食べようね」など、楽しみなことを一つだけ伝えておくのもおすすめです。
つらいことの先に楽しみがあると分かると、少しだけがんばれる子もいます。
ここまでの内容を、表にまとめておきます。
| 嫌がる理由 | 家でできる工夫 |
|---|---|
| 音や人の多さがつらい | 大きな音が鳴ることを前もって伝える |
| 予定が変わるのが不安 | プログラムを一緒に見て、流れを確かめる |
| 見られるのが不安 | 結果ではなく、がんばった部分に目を向ける |
| 練習に疲れている | 家ではゆっくり休める時間をつくる |
気持ちの切り替えそのものが苦手な場合は、こちらの記事も参考になります。


え、そうだったの〜!?プログラムって、わたしが見るものだと思ってた!子どもと一緒に見るものだったんだ…。

そうだわん!流れが分かるだけで、ぐっと安心できる子は多いんだわん。一緒に「ここが楽しみだね」って話せたら、もっといいわん。
練習を嫌がる子の、運動会当日の考え方
準備をしていても、当日になって「やっぱり嫌」となることはあります。
そのときに知っておきたい考え方をまとめます。
当日は、親のほうも緊張しやすいものです。
先に考え方を知っておくだけで、少し落ち着いて見守れるようになります。
「参加のしかた」は、ひとつだけじゃない

運動会は、全部の種目に出ることだけが参加ではありません。
かけっこだけ出る。ダンスは先生のそばで見る。入場行進だけ一緒に歩く。
できるところだけ参加するという形をとっている園や学校もあります。
気になるときは、事前に担任の先生に伝えておくと安心です。
「音が苦手なようです」「最初の種目で緊張しやすいです」など、ひとこと伝えておくだけでも、当日の声かけが変わることがあります。
見学することになっても、それは失敗ではありません。
その場にいて、みんなの様子を見ることも、その子なりの参加のしかたです。
音が苦手な子の場合は、イヤーマフ(耳をおおって音を小さくする道具)を使えるか、先生に聞いてみる方法もあります。
園や学校によって対応はさまざまなので、まずは気軽にたずねてみるのがおすすめです。
観客席からは、大きく手をふるより、目が合ったらにっこりするくらいがちょうどよいこともあります。
注目されるのが苦手な子にとっては、そのほうが安心できる場合があるからです。
先生に伝えるときは、「こうしてほしい」とお願いするより、「こういうことが苦手なようです」と様子を伝える形のほうが、先生も対応を考えやすくなります。
がんばった部分を、小さく具体的にほめる

運動会が終わったら、結果よりもがんばった部分を言葉にしてあげましょう。
「最後まで座って応援できたね」
「入場のとき、ちゃんと前を向いて歩いていたね」
「大きな音、びっくりしたけど我慢できたね」
「すごかった」とまとめてほめるより、何ができたかを具体的に伝えるほうが、子どもには届きやすいと言われています。
たとえ一部しか参加できなかったとしても、その日にできたことは、どこかにきっとあります。
見つけた小さな「できた」を、そのまま言葉にして返すだけで十分です。
ほめる言葉が思いつかないときは、「見ていたよ」と伝えるだけでも大丈夫です。
自分のことをちゃんと見てくれていた、という事実そのものが、子どもにとっての安心になります。
写真や動画が撮れていたら、あとで一緒に見返して「ここ、がんばってたね」と話すのもよいでしょう。
時間がたってから振り返ると、本人も落ち着いて自分のがんばりを受け止めやすくなります。
反対に、できなかったことには、あえてふれなくても大丈夫です。
子ども自身がいちばんよく分かっていることが多いからです。

…もし見学になったら、わたしのほうが落ちこんじゃいそう。ほかの子を見て、比べちゃう気がするの。

そう感じるのは、それだけ一生懸命だからだわん。比べちゃった自分を責めなくていいわん。大丈夫、一緒に考えるわん!
みんなと同じ動きが苦手な場合については、こちらの記事でもまとめています。

まとめ:運動会の練習を嫌がる子に寄り添うために
最後に、いちばんお伝えしたいことを書きます。
練習を嫌がるのは、わがままではなく気持ちの表れ

運動会の練習を嫌がる姿を見ると、「このままで大丈夫かな」と心配になりますよね。
でも、「嫌だ」と言えるのは、自分の気持ちを外に出せている証拠でもあります。
音がつらい、見られるのが不安、疲れている。その気持ちを、言葉や態度で伝えてくれているのです。
気持ちを受け止めてもらえた経験は、次に不安なことがあったときの支えになります。
運動会そのものより、その経験のほうが長く残るのかもしれません。
今年の運動会で思うように参加できなかったとしても、それで何かが決まるわけではありません。
年齢とともに、できることや安心できる場面は少しずつ増えていくと言われています。
去年は泣いていた子が、今年は入場だけできた。
そんな小さな変化も、立派な成長のひとつです。
そして、嫌がる子を前に悩んでいる親御さん自身も、十分がんばっています。
一人で抱え込まなくて大丈夫です。
運動会のあとに残るのは、親子の安心感

運動会は一日で終わります。
でも、その前後の親子のやりとりは、子どもの心にしっかり残ります。
「嫌だったけど、話を聞いてもらえた」
「できたところを見てもらえた」
その安心感があれば、来年の運動会や、ほかの行事に向かう気持ちも少しずつ変わっていくと言われています。
今年は今年のペースで、大丈夫です。
運動会が終わったら、「おつかれさま」とひとこと声をかけて、家でゆっくり過ごす時間をとってあげてください。
いつもとちがう一日を過ごした子どもにとって、それがいちばんのごほうびになることもあります。
親のほうも、行事の前後は思っている以上に疲れています。
子どもと一緒に、早めに休む日にしてもいいかもしれません。

運動会って、子どもががんばる日だと思ってたけど、親も一緒に準備する日なんだね!なんだか、ちょっと楽しみになってきたかも。

その通りだわん!一緒に準備した時間は、結果に関係なく親子の宝物になるわん。
この記事のチェックポイント
・運動会の練習には、音・予定の変化・人目など負担が重なりやすい
・「どれが嫌?」と選べる形で気持ちを聞いてみる
・当日の流れを、プログラムや絵で先に見せておく
・参加のしかたはひとつじゃない。気になることは先生に伝えておく
・結果より、がんばった部分を具体的にほめる
アイキャッチ画像:Photo by BOOM 💥 Photography on Pexels



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