ハサミが苦手な子の気持ちと、つまずきやすい場面
こんにちは!おやまどの鈴木です。
工作の時間になると、ハサミを持ったまま固まってしまう。紙がうまく切れず、線からはみ出して泣きそうになる。そんなお子さんの姿を見ると、「うちの子、手先が不器用なのかな」と心配になりますよね。
この記事では、ハサミが苦手な子がつまずきやすい理由と、ご家庭で無理なく試せる関わり方を、やさしい言葉で整理していきます。「うちの子だけ?」と感じている方も、読み終えるころには少し気持ちが軽くなるはずです。
ハサミが苦手だからといって、やる気がないわけでも、努力が足りないわけでもありません。つまずきの理由は、お子さんによってさまざまです。まずは「どこで困っているのかな」と、一緒に探してみましょう。
ハサミが苦手な子が感じている、むずかしさと不安

ハサミが苦手な子は、実際にどんな場面で困っているのでしょうか。よくあるパターンを、いくつか挙げてみます。
ひとつ目は、ハサミを開いたり閉じたりする力加減が難しいことです。指の力が入りすぎて刃がガタガタになったり、逆に力が足りず紙が折れ曲がったまま挟まったりすることがあります。
ふたつ目は、紙を持つ手がうまく動かせないことです。ハサミを動かすことに集中するあまり、反対の手が止まってしまい、紙が曲がって切りにくくなる、というケースもあります。
みっつ目は、線を目で追いながら切る難しさです。線を見る、刃先を見る、紙の向きを変える、という動きを同時にこなすのは、慣れるまで大変な作業です。よくある例として、線の途中で目が離れてしまい、気づくと大きくはみ出しているという場面があります。
こうした「うまくいかない」経験が重なると、「ぼくはハサミが下手だから」「また失敗する」という気持ちが育ってしまうことがあります。すると、工作そのものを避けるようになる子もいます。
つまり、困っているのは手先だけではありません。「またできなかったらどうしよう」という不安も、ハサミが苦手な子の大きな重荷になっているのです。この気持ちに気づいてあげることが、最初の一歩になります。
保育園や幼稚園、学校では、ハサミを使う場面が思った以上に多くあります。制作の時間、季節の飾りづくり、プリントの切り抜きなど、毎日のように出てきます。そのたびに「また自分だけうまくできない」と感じてしまうと、気持ちが少しずつ重くなっていきます。
ご家庭では、ハサミを使う機会が少ないために、慣れる経験そのものが足りていないこともあります。これは、決して親御さんのせいではありません。これから少しずつ、楽しい経験を増やしていけば大丈夫です。

うちの子、ハサミを見ただけで「やりたくない」って言うんです…。わたし、てっきりやる気がないのかと思ってました。

それは違うわん!やる気がないんじゃなくて、「失敗したくない」気持ちが強いのかもしれないわん。まずは気持ちに寄りそってあげるわん。
ハサミが苦手な子が、とくにつまずきやすいタイミング

ハサミが苦手な子がつまずきやすい場面には、いくつかの傾向があります。あらかじめ知っておくと、先回りして手助けしやすくなります。
まず多いのが、曲線や角を切るときです。まっすぐな線なら切れても、丸や三角になると急に難しくなります。紙を回しながら切る必要があるので、反対の手の動きが一気に増えるからです。
次に、時間が決まっている場面です。学校の図工やお楽しみ会の準備では、「みんなと同じペースで」と言われがちです。急がされると焦りが出て、いつもできることまでうまくいかなくなる子もいます。
また、厚い紙や画用紙は、薄い折り紙よりも力が必要です。ハサミ自体が子どもの手に合っていないと、ますます切りにくくなります。大人用のハサミを使っている場合は、サイズが原因のこともあります。
さらに、年齢によって求められる動きが変わる点も見逃せません。年少さんなら「まっすぐ一回切り」、年長さんなら「簡単な形を切る」、小学生になると「線に沿って細かく切る」と、少しずつ難しくなっていきます。
こうした場面を先に知っておくと、「今日はここで止まったんだな」と理由が見えやすくなります。理由が見えると、叱る前に「どうすれば切りやすくなるかな」と考えられるようになります。
たとえば、「急がなくていいから、ゆっくりやろうね」と先に伝えておくだけでも、子どもの表情が変わることがあります。ハサミが苦手な子にとって、安心して取り組める空気は、道具と同じくらい大事な支えなのです。
また、うまくいかなかった日の夜は、「今日はハサミ、ちょっと大変だったね」と、気持ちを言葉にしてあげるのもおすすめです。気持ちをわかってもらえたと感じると、次の日の挑戦に向かう力がわいてきます。
ハサミが苦手な子と進める、楽しい練習とやさしいステップ
苦手なことを練習するとき、いちばん大切なのは「楽しい」と感じられることです。ここでは、ハサミが苦手な子と一緒に取り組める、段階的な練習のアイデアを紹介します。
ハサミが苦手な子に向いている、一回切りから始める遊び

最初のステップは、細長い紙を一回だけチョキンと切ることです。いきなり形を切ろうとせず、「切れた!」という成功を積み重ねていきます。
たとえば、画用紙を2センチ幅の細長い帯にして、「ごはんを切ろう」「麺をチョキチョキしよう」と声をかけます。ごっこ遊びの要素を入れると、練習というより遊びとして取り組みやすくなります。
コツは、紙を持ってあげることです。大人が紙の端をそっと持つだけで、子どもはハサミの開閉だけに集中できます。慣れてきたら、少しずつ子ども自身で紙を持つ練習に移ります。
次の段階では、帯を2回、3回と連続して切る練習に進みます。「1、2、3」とリズムをつけて数えると、動きが整いやすくなります。1回ごとに「いいね!」と声をかけてあげましょう。
ほかにも、雑誌やチラシを自由にちぎる遊びは、ハサミの前段階としておすすめです。指先でつまむ、引っぱる、という動きが、ハサミを動かす力のもとになると言われています。ちぎった紙をのりで貼れば、そのまま工作にもなります。
ハサミを動かす手だけでなく、紙を持つ手の練習も大切です。「お手伝いの手」と名前をつけて、反対の手の役割をわかりやすく伝えると、子どもが意識しやすくなります。
一回切りの練習について、くわしくはこちらの記事でも紹介しています。

ハサミが苦手な子の気持ちをほぐす、線なぞりと形切りの工夫

一回切りに慣れてきたら、線に沿って切る練習へ進みます。ここでも、いきなり難しい線は選びません。
おすすめは、太くて色のついた線です。黒い細線より、太い赤や青の線のほうが目で追いやすくなります。最初はまっすぐ、次にゆるやかな波、そのあとに角のある形、という順番で進めると、つまずきにくくなります。
線をなぞる練習には、ペンで線を引いた紙のほか、お子さんの好きなキャラクターの輪郭を使う方法もあります。好きなものを切れるとわかると、気持ちが前向きになりやすいのです。
また、切れたものを使って遊ぶのも効果的です。切った紙で飾りを作る、お店屋さんごっこの食べ物にする、など、切った先に楽しみがあると、練習が続きやすくなります。
途中で失敗しても、「ここまで上手に切れたね」と、できた部分に目を向けてみましょう。はみ出した線の長さより、最後まで切ろうとした気持ちを認めてあげたいところです。
線をなぞる練習を何日か続けても、思うように進まないときは、一度レベルを戻してみましょう。簡単なところに戻ることは、後退ではありません。確実にできる段階で自信を取り戻してから、また次に進めば大丈夫です。
お子さんが「やりたい」と言ってきたときは、練習のチャンスです。無理に切り上げず、気がすむまで付き合ってあげると、自分から取り組む気持ちが育っていきます。

切った紙でお魚を作ったら、うちの子ニコニコで!わたしのほうがはしゃいじゃいました。えへへ…。

それがいちばん大事わん!楽しい記憶が残れば、次もハサミを持ってみようと思えるわん。
ハサミが苦手な子が使いやすい、道具と環境の整え方
練習の工夫と同じくらい大切なのが、道具と環境です。実は、ハサミが苦手な理由が「道具が合っていないだけ」ということも少なくありません。
ハサミが苦手な子に合う、ハサミの選び方と持ち方

まず見直したいのが、ハサミのサイズと形です。お子さんの手に対して大きすぎると、重くて動かしにくくなります。持ったときに、親指と中指がラクに入る大きさを選びましょう。
市販のハサミには、刃先が丸い幼児用のほか、バネが付いていて自然に開くタイプもあります。バネ付きは、閉じる力だけで切れるので、指の力に不安がある子でも取り組みやすい道具です。
左利きのお子さんには、左利き用のハサミが使いやすい場合があります。右利き用だと、刃が重なる向きの関係で線が見えにくくなることがあるためです。
持ち方は、親指を上の穴、中指を下の穴に入れ、人差し指を外側から添えるのが基本の形と言われています。ただ、最初から完璧な形にしようとせず、お子さんが切りやすい持ち方を尊重するのも大切です。
座る姿勢も、ハサミの動きに影響します。足が床に着き、机の高さが合っていると、体が安定して手先に集中できます。足がぶらぶらしている場合は、足台を置いてあげると落ち着くことがあります。
試しに何種類かのハサミを触ってみて、お子さんに「どれが切りやすい?」と聞いてみるのも良い方法です。自分で選んだ道具には愛着がわき、使ってみようという気持ちも高まります。文具店で実際に持ち比べてみるのもおすすめです。
ハサミ選びのチェックポイント
・手の大きさに合うサイズか
・刃先が丸く、安全に使えるか
・指を入れる穴が小さすぎないか
・利き手に合った向きか
・開閉が重すぎないか
ハサミが苦手な子が落ち着いて取り組める、時間と声かけ

道具が整ったら、次は取り組む時間と声かけです。眠いときや疲れているときは、いつもできることもうまくいかなくなります。機嫌のよい時間帯を選んで、短い時間から始めましょう。
目安は、1回5分程度です。「あと少しやりたい」と思うくらいで終えると、次につながります。長くやりすぎると、嫌な記憶になってしまうことがあります。
声かけは、結果ではなく過程を認めるのがコツです。「上手に切れたね」だけでなく、「紙をしっかり持てたね」「最後まで切ったね」と、具体的な動きを言葉にして伝えます。
避けたいのは、「もっとまっすぐ切って」「はみ出してるよ」といった指摘です。悪気がなくても、子どもには責められているように聞こえることがあります。直したいところがあるときは、次にやってみたい工夫を一緒に考える形にします。
きょうだいや友達との比較も、子どもの気持ちを下げやすい言葉です。ほかの子ではなく、昨日のその子と比べて、「前よりスムーズに切れたね」と伝えてあげましょう。
もうひとつ、ご家庭で取り入れやすいのが、終わりを先に決めておく工夫です。「この紙を3回切ったら終わりだよ」と見通しを伝えると、子どもは安心して取り組めます。終わりが見えない作業は、それだけで負担になりやすいものです。
切り終えたあとは、できあがったものを見せ合ったり、飾ったりして、「やってよかった」と思える時間を作りましょう。そうした積み重ねが、次の意欲につながっていきます。
気持ちの切り替えが難しい子への関わり方は、こちらの記事でもまとめています。


声かけって、むずかしいですよね…。つい「ほら、はみ出てるよ」って言っちゃいそうで。

気持ちはわかるわん。でも、「ここまで切れたね」から始めると、親子ともラクになるわん。一緒に練習するわん!
まとめ:ハサミが苦手な子を、責めずに見守るために
ここまで、ハサミが苦手な子の理由と、ご家庭でできる工夫を見てきました。最後に、大切なポイントをもう一度整理します。
ハサミが苦手な子への声かけと、できたことの認め方

ハサミが苦手な子は、「切れない」ことで自信をなくしていることがあります。だからこそ、小さな「できた」を見つけて言葉にすることが、いちばんの支えになります。
たとえば、「紙を押さえられたね」「3回続けて切れたね」「最後まであきらめなかったね」。どれも、立派な成長です。結果がきれいかどうかより、取り組んだ気持ちを認めてあげましょう。
ご家族みんなで、ハサミが使えるようになるまでの道のりを見守る気持ちで関われると理想的です。おじいちゃんやおばあちゃんに「上手になったね」と言ってもらえる機会があれば、子どもの励みになります。
また、ハサミが使えるようになるスピードは、お子さんによって違います。数週間で急に上達する子もいれば、数か月かけてゆっくり進む子もいます。周りと比べず、その子のペースを大事にしたいところです。
手先を使う遊びは、ハサミ以外にもたくさんあります。粘土をちぎる、洗濯ばさみをつまむ、ビーズを通すといった遊びも、指先の力を育てる助けになると言われています。
手先の動きについては、こちらの記事でも取り上げています。気になる方は、あわせて読んでみてください。


ハサミの練習って、結果より「楽しかったね」が大事なんですね。ちょっと肩の力が抜けました!

その気持ちが子どもにも伝わるわん。親がにこにこしていると、子どもも安心するわん。
ひとりで抱え込まず、ハサミが苦手な子のペースで進めよう

ハサミが苦手でも、焦らなくて大丈夫です。手先の動きは、経験を重ねるうちに少しずつ変わっていきます。今日できなくても、明日できるようになることもあります。
うまくいかない日は、ハサミをお休みしてもかまいません。「今日はやめておこう」と決める日があっても、練習が無駄になるわけではありません。無理なく続けることのほうが、ずっと大切です。
ハサミが苦手なことは、お子さんの個性のひとつでもあります。ほかにも得意なこと、好きなことがきっとあるはずです。そちらにも目を向けて、その子らしさ全体を大切にしていく気持ちでいてくださいね。
悩んだときは、一人で抱え込まないでください。同じような悩みを持つ保護者は、たくさんいます。園や学校の先生に、「家ではこんな工夫をしています」と話してみるのもひとつの方法です。情報を共有するだけでも、気持ちが軽くなることがあります。
ハサミが苦手な子へのかかわり方のポイントは、①成功しやすい形から始める ②道具と姿勢を整える ③結果より過程を認めるの3つです。完璧を目指さず、その子のペースで楽しく続けていきましょう。
お子さんの「できた!」の笑顔が、これからもたくさん増えていきますように。おやまどは、これからも保護者のみなさんに寄りそっていきます。
アイキャッチ画像:Photo by Anastasia Shuraeva on Pexels



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