かけっこが苦手な子の気持ちと、つまずきやすい理由
こんにちは!おやまどの鈴木です。
かけっこが苦手な子が感じている、むずかしさと不安

運動会の季節が近づくと、「かけっこが嫌だ」「走るのがこわい」と言いはじめる子がいます。スタートの合図で固まってしまったり、順位を気にしてしょんぼりしてしまったり。かけっこが苦手な子を前に、どう声をかけたらいいのか迷う保護者の方は多いのではないでしょうか。
この記事では、かけっこが苦手な子がつまずきやすい理由と、家庭でできる練習の工夫を、やさしい言葉で整理していきます。「うちの子だけ?」と感じたときのヒントになればうれしいです。
かけっこが苦手な子が感じやすいことを、いくつか見てみましょう。
ひとつ目は、スタートへの緊張です。「よーい、ドン」の合図を待つ時間は、子どもにとって長く感じられます。合図の音におどろいたり、出遅れないかと心配になったりする子もいます。
ふたつ目は、まわりと比べられる不安です。みんなが見ている前で走るので、「遅いと思われたらどうしよう」と、気持ちが重くなる子もいます。
みっつ目は、からだの動かし方のむずかしさです。腕と足のリズムをそろえることや、バランスをとりながら進むことが、まだ慣れていない子もいます。
よっつ目は、これまでの経験です。転んでしまった経験や、友だちに笑われた経験があると、「走る=いやなこと」というイメージが残りやすくなります。
これらは「やる気がない」のではなく、感じ方や、慣れていない経験からくる自然な反応であることが多いです。まずは、お子さんがどんなふうに感じているのかを知ることから始めてみましょう。
かけっこは、ほかの運動よりも「結果」が目に見えやすい種目です。順位やタイムがはっきり出るので、自信をなくしやすい子もいます。その気持ちを想像してみるだけでも、声のかけ方が自然にやさしくなっていきます。

うちの子、かけっこの話をすると、すぐ話をそらしちゃうの。わたし、てっきり走るのが嫌いなのかと思ってたの。

それは違うかもしれないわん。「うまくできないかも」と心配している気持ちが、かくれているのかもしれないわん。まずは気持ちを聞いてみるわん。
かけっこが苦手な子に多い、からだの使い方の「ちがい」とは

かけっこが苦手な子には、からだの使い方に、いくつか特徴が見られることがあります。
たとえば、腕の振りと足の動きがバラバラになりやすい子がいます。右足を出すときに右腕も出てしまったり、腕を振らずに走ったりすることがあります。
また、足の運びが小さく、歩幅がせまい子もいます。足を大きく前に出すのがむずかしく、走っているつもりでも前に進みにくいことがあります。
さらに、スタートのタイミングが合いにくい子もいます。合図を聞いて、身体が動き出すまでに少し時間がかかることがあります。
ほかにも、まっすぐ走ることがむずかしい子もいます。目線が下がったり、足元ばかり見てしまったりして、走る方向がずれてしまうことがあります。ゴールの先の目印を見るように伝えると、走りやすくなる子もいます。
これらは、体の使い方に「慣れていない」だけというケースも多いです。「運動神経が悪い」と決めつけず、「まだ練習中なんだな」と考えてみてくださいね。
専門的な言葉で言うと、協調運動(からだの複数の部分を同時に動かす力)や、ボディイメージ(自分の身体の動きを頭でイメージする力) が関係していると言われることもあります。むずかしく考えなくても大丈夫です。「走るには、たくさんの力が必要なんだな」と思っておくだけで、声のかけ方が変わってきます。
気持ちや環境も、かけっこが苦手な子の力に影響する

かけっこが苦手な理由は、からだの動きだけではありません。気持ちや環境も大きく影響します。
たとえば、「ビリになりたくない」という気持ちが強いと、緊張して身体がかたくなり、本来の力が出にくくなることがあります。
また、運動会の練習が続くと、疲れがたまったり、「また練習か」と気持ちが重くなったりすることもあります。
よくある例として、友だちとの競争で負けたことがきっかけで、「どうせ走っても遅いし」と、自分から手を挙げなくなってしまう場面もあります。
また、くつが合っていないことも、意外と見落としやすいポイントです。サイズが大きすぎて足が中でずれたり、底がすべりやすかったりすると、走りにくさにつながります。
体調や睡眠不足、お腹がすいているときなど、その日のコンディションによって、走りやすさが変わることもあります。同じ道でも、日によって反応がちがうのは、不思議なことではありません。
お子さんの話を聞くときは、「どうして走らないの?」と問い詰めるより、「かけっこのどんなところが心配かな?」と、選べる形で聞くほうが答えやすいことがあります。「スタートがこわい」「ビリが気になる」「足が疲れる」など、いくつか例を出してあげるのもひとつの方法です。
かけっこが苦手な子が、とくに困りやすい場面
かけっこが苦手な子が、スタートの合図で固まってしまうとき

「位置について、よーい」の場面で、かけっこが苦手な子がいちばん緊張するのは、スタートの瞬間かもしれません。
静まりかえった中で、合図を待つ時間は長く感じます。ドンという大きな音に、びくっとして身体が固まってしまう子もいます。
こうした場面では、スタートの練習を家でしておくと、安心につながることがあります。たとえば、「よーい、ドン」の声だけでなく、手をたたく音や笛の音など、いろいろな合図で走り出す練習です。
スタートが苦手な子への工夫
・合図を事前に伝えておく(「よーい、ドンって言うよ」)
・大きな音が苦手なら、小さな声で練習する
・「ドン」で走りだすゲーム感覚の遊びにする
・短い距離から始めて、成功体験を積む
また、スタートの姿勢を一緒にとってみるのも効果的です。足を前後に開いて、体重をやや前に乗せる姿勢を、鏡の前で練習してみるのもよい方法です。
お子さんが「走り出せた」と感じるだけでも、大きな進歩です。スタートできたこと自体を、ほめてあげてください。
家での練習では、ゴールを短くしてみるのもよい方法です。最初は5歩、つぎは10歩と、少しずつ距離をのばしていくと、「走れた」という成功体験が積み重なっていきます。ゴールには、お気に入りのタオルやぬいぐるみを置いておくと、目標がわかりやすくなります。
かけっこが苦手な子が、順位や友だちとの比較で落ち込むとき

かけっこで多いのは、順位や友だちとの比較で気持ちが落ち込む場面です。
「ビリだった」「また負けた」という結果が続くと、お子さんは「自分は走るのが遅い」という気持ちを強めてしまいます。その気持ちが、次の練習への意欲をさらに下げてしまうこともあります。
そんなときは、順位以外のものさしを持つのがおすすめです。たとえば、「前よりも最後まで走りきれた」「スタートが上手になった」「腕をしっかり振れていた」など、自分なりの成長に目を向ける方法です。
また、ほかの子と比べる言葉は、できるだけ避けたいところです。「お兄ちゃんは速かったのに」「あの子はもう走れるのに」といった言葉は、悪気がなくても、お子さんの心に残りやすいです。
比べる相手は、昨日のお子さん自身です。昨日より、ほんの少しできたことを、一緒に見つけていきましょう。
たとえば、「腕がしっかり振れていたね」「顔が上がっていたね」「最後まで走ったね」と、具体的にほめるのもおすすめです。「えらいね」だけよりも、どこがよかったのかが伝わるので、お子さんも次に何をがんばればいいのかがわかりやすくなります。
走る練習そのものを、かけっこが苦手な子が嫌がるとき

「練習しよう」と声をかけても、かけっこが苦手な子が乗ってこないことがあります。これは、練習そのものが「いやなこと」になっているのかもしれません。
何度も走らされたり、できないところを指摘され続けたりすると、練習が苦痛になってしまいます。練習の量よりも、気持ちよくできるかどうかのほうが大切です。
「もう一回」「ちがう、そうじゃない」とくり返すと、お子さんは「失敗した」という気持ちを強めてしまいます。1回の練習は短く、気持ちよく終わることを大切にしましょう。
練習のかわりに、遊びの中で自然に走る機会をつくる方法もあります。鬼ごっこ、ボール追いかけ、しっぽとりなど、「走ろう」と思わなくても、楽しいうちに身体が動く遊びです。
「練習」という言葉を使わず、「ちょっと遊ぼうか」と声をかけるだけで、気持ちがちがってくる子もいます。
公園でのびのびと走り回る時間も、大切な練習のひとつです。広い場所で、自分のペースで走る経験は、走ることへの気持ちよさを思い出させてくれます。タイムを計ったり、ほかの子と競ったりしない時間をつくってみてください。
かけっこが苦手な子に、家庭でできる工夫
家庭でできる、かけっこが苦手な子の「走る準備運動」

かけっこが苦手な子に、家でできる工夫として、走る前の準備運動があります。
まず、足首やひざを軽く動かすことで、身体がほぐれて走りやすくなります。足首をまわす、ひざを曲げ伸ばしする、その場で軽くジャンプするなど、短い時間でできるものばかりです。
つぎに、腕を大きく振る練習です。立ったまま、腕を前後に大きく振ってみましょう。「ぐー」にぎって、肘を曲げて、前と後ろへ。リズムをつけて、歌に合わせて行うのも楽しいです。
そのあと、その場足踏みから始めて、軽く走るへと、少しずつステップを上げていきます。

歌に合わせるのっていいね!うちの子、好きな歌なら張りきるから、できそう!ふふふ。

そうわん!楽しい気持ちは、からだを軽くするわん。あせらず楽しんでいくわん!
ほかの子と比べず、昨日のお子さんと比べて、ほんの少しできたことを見つけるようにすると、保護者の方の気持ちも軽くなります。
たとえば、「昨日より腕が大きく振れた」「スタートの合図で前を向けた」といった小さな変化も、大切な前進です。カレンダーにシールを貼って、練習した日を目に見える形にするのも、お子さんの励みになることがあります。
見通しと「選べる」安心で、かけっこが苦手な子を支える

かけっこが苦手な子にとって、見通しがわかることは大きな安心につながります。「いつ走るのか」「どこまで走るのか」がわからないと、不安が大きくなりやすいからです。
運動会の前に、次のような工夫が助けになることがあります。
当日の見通しの伝え方
・運動会の流れを、絵や写真で一緒に見る
・走るコースを、下見の日に歩いてみる
・「スタートの合図は、笛だよ」と事前に教えておく
・「走り終わったら、レジャーシートで休もうね」と先を伝える
ここでのポイントは、「選べる」ことで、気持ちに余裕が生まれることです。「全力で走る」ではなく、「自分のペースで最後まで走る」を目標にすると、気持ちが楽になる子もいます。
校庭の下見をしておくのも、大切な準備です。前の日に、先生と相談して、スタートの場所やゴールの位置を確認しておくだけで、当日の緊張が和らぐことがあります。
先生に伝えるときは、「走るのが苦手です」だけでなく、「スタートの合図で緊張しやすいです」のように、具体的な場面を添えると、先生も対応を考えやすくなります。連絡帳に書くのも、落ち着いて伝えられる方法です。
運動会の練習そのものが苦手な場合は、こちらの記事も参考にしてみてください。

長い距離を走る行事が気になる場合は、マラソン大会についての記事もあわせてどうぞ。

好きなことを入口にして、かけっこが苦手な子の気持ちをほぐす

最後に、好きなことを入口にする方法です。走ること自体は苦手でも、「好きなこと」とつなげると、気持ちが動くことがあります。
たとえば、好きなキャラクターのくつ下をはく、走ったあとにお気に入りのおやつを食べる、好きな動画を見る。こんなふうに、走ることのまわりに「楽しい」を増やしていくのも方法のひとつです。
また、保護者の方が一緒に走ってみるのも、ひとつの方法です。「ママと競争しよう」ではなく、「いっしょに走ろう」と声をかけ、手をつないだり、横に並んで走ったりすると、安心しやすいお子さんもいます。
走れた日には、結果よりも 「がんばろうとした気持ち」 を言葉にして伝えてあげてください。「速かったね」よりも「最後まで走ったね」と声をかけることで、お子さんは自分の一歩を認めてもらえた気持ちになります。
運動会が終わったあとも、「当日の気持ち」を聞いてあげる時間を持てるといいですね。「どうだった?」と聞いて、うれしかったことやくやしかったことを、ゆっくり話してもらいましょう。気持ちを言葉にすることで、次の挑戦への心の準備になります。

「最後まで走ったね」って、言ってあげるのね。わたしもほめるの、がんばるわ!

そうわん!保護者さんが笑顔でいてくれることが、いちばんの安心になるわん。大丈夫、一緒に考えるわん!
保護者の方も、一人で抱え込みすぎないことが大切です。園や学校の先生、同じ悩みを持つ保護者の方と話すだけで、気持ちが軽くなることもあります。
まとめ:かけっこが苦手な子と、ゆっくり進めるために
ここまで、かけっこが苦手な子の気持ちや、家庭でできる工夫についてお伝えしてきました。最後に、大切なポイントをまとめます。
かけっこが苦手な子の気持ちと工夫を、あらためて整理する

この記事のポイント
かけっこが苦手な理由は、スタートの緊張、からだの使い方、比べられる不安など、子どもによってさまざまです。見通しと「選べる」安心を用意し、順位ではなくお子さん自身の成長に目を向けながら、少しずつ進めていきましょう。
今日の「ここまでできたね」という小さな発見を、ぜひ一緒に喜んであげてくださいね。
走る力は、一直線には伸びません。昨日はできたのに、今日はできない、ということもよくあります。そんな日があっても、「また明日、少しずつね」と声をかけてもらえると、お子さんは安心して次の一歩を踏み出せます。
かけっこが得意かどうかは、お子さんの価値とは関係ありません。走ることが苦手でも、ほかのことで輝いている場面はたくさんあります。運動会は、いろいろな場面での「がんばり」を見つけられる日でもあります。
一人で抱え込まず、かけっこが苦手な子と一緒に進んでいく

祖父母や周りの人に事情を伝えておくのも、気持ちが楽になる方法です。「走るのがちょっと苦手なので、見守っていてください」と一言伝えておくだけで、あたたかく応援してもらえることがあります。
保護者の方も、運動会が近づくと、ドキドキしているかもしれません。そんなときは、「ここまで一緒にがんばったね」と、自分自身にも声をかけてあげてください。
走ることへの気持ちは、ゆっくり、その子のペースで少しずつ軽くなっていきます。あせらず、安心できるところから始めていきましょう。
アイキャッチ画像:Photo by Jan van der Wolf on Pexels



コメント