ドライヤーを嫌がる子の気持ちと、つまずきやすい理由
こんにちは!おやまどの鈴木です。
ドライヤーを嫌がる子が感じている、音と熱のこわさ

お風呂上がり、「髪を乾かそうね」と声をかけたとたんに、さっと逃げていってしまう。ドライヤーを手にしただけで、泣き出してしまう。そんな場面に、毎晩ぐったりしている保護者の方も多いのではないでしょうか。ドライヤーを嫌がる子は、決してわがままで逃げているわけではありません。
ドライヤーは、大人にとっては「髪を乾かす便利な道具」です。けれど子どもにとっては、大きな音がして、熱い風が顔のまわりに当たり、髪がぐしゃぐしゃに動く、ちょっと不思議でこわい機械でもあります。いつ風が来るのか、どこまで続くのかが見えないことも、不安につながると言われています。

うちの子、ドライヤーを出しただけで「やだー!」って走って逃げるの。わたし、てっきり甘えてるだけだと思ってたんだけど…。

それは違うわん! ドライヤーの音は、子どもの耳にはボクたちが思うより大きく聞こえていることもあるわん。まずは「こわいんだね」と受けとめるところから始めるわん。
たとえば、掃除機の音や花火の音が苦手な子は、ドライヤーの音にも身構えやすいことがあります。音の大きさ、風の強さ、熱さ、顔まわりの感触。いくつかの刺激が同時にやってくるので、ひとつひとつは小さくても、まとめて受けとめるのが大変という場面は少なくありません。
まずは「ドライヤーが苦手なのには、ちゃんと理由があるのかもしれない」と考えてみてください。それだけで、毎晩の攻防が少しだけ静かになることもあります。
また、子どもは自分の気持ちをことばでうまく説明できないことも多いものです。「音がこわい」と言えず、「やだ」「きらい」としか言えないことがあります。そんなときは、「うるさいのがいやなのかな?」「あついのがいやなのかな?」と、気持ちを代わりにことばにしてあげると、子どもが「わかってもらえた」と感じやすくなります。
気持ちをわかってもらえたという安心感は、苦手なものに向き合うための土台になります。ドライヤーに慣れる練習を始める前に、まずこの土台を整えておくことが、遠回りのようで近道になることもあります。
ドライヤーを嫌がる子に多い、感覚の「ちがい」とは

人によって、音や肌ざわり、温度の感じ方には幅があります。同じドライヤーの風でも、「あたたかくて気持ちいい」と感じる子もいれば、「ちくちくして落ち着かない」と感じる子もいます。感じ方のちがいは、性格や育て方とは別の話だと言われています。
専門用語で、音や感触に敏感なことを「感覚過敏」と呼ぶことがあります。これは「いつもより刺激を強く受けとりやすい状態」というくらいの意味で、一つのことばでかんたんに決めつけられるものではありません。ここでは「その子なりの感じ方がある」と考えるくらいで十分です。
たとえば、同じきょうだいでも、ドライヤーを平気で受け入れる子と、まったくだめな子がいることがあります。それは、どちらかが「おりこう」でどちらかが「困った子」という話ではありません。もともとの感じ方のちがいが、そのまま表れているだけかもしれません。
感覚のことをくわしく知りたいときは、こちらの記事も参考になります。

「どの刺激がいちばん苦手なのかな?」と、少し離れたところから観察してみるのがコツです。音なのか、熱なのか、顔に風が来ることなのかがわかると、工夫の方向が決まりやすくなります。
観察するときは、ドライヤーを使う場面だけでなく、ふだんの様子も思い出してみてください。シャワーの水圧を嫌がる、帽子やマフラーをかぶるのを嫌がる、洗濯機の音で耳をふさぐ。そうした様子とのつながりが見えてくると、「あ、そういうことか」と腑に落ちることがあります。
ドライヤーを嫌がる子が、とくに困りやすい場面
お風呂上がりに、ドライヤーを嫌がる子が逃げ回るとき

お風呂上がりは、体がぽかぽかして眠くなってくる時間帯です。子どもはもう疲れていて、「早く布団に行きたい」と思っていることもよくあります。そこにドライヤーの音が加わると、疲れとこわさが重なって、いっそう嫌がりやすくなることがあります。
よくある例として、パジャマ姿でソファの後ろに隠れてしまったり、タオルをかぶって「いやだ」と言い続けたりする場面があります。保護者の方も一日の終わりで余裕がなく、つい「早くしなさい」と声が強くなってしまいがちです。

夜はわたしもぐったりで、つい「もう! ちゃんとして!」って言っちゃうのよね…。えへへ…。

そんな夜もあるわん。大丈夫、一緒に考えるわん。時間帯を少しずらすだけで、うまくいく家庭もあるわん。
お風呂から出てすぐではなく、バスタオルでしっかり拭いたあとにひと休みしてから乾かす。あるいは、朝に髪を整える日をつくる。「今日は無理をしない日」を決めておくと、気持ちにゆとりが生まれます。
週末の朝のように、時間にゆとりがある日は、ゆっくり慣れる練習の日にするのもよい方法です。平日の夜は「タオルでしっかり拭いてあたためる」だけにして、練習の日と、休む日を分けておくと、親子のどちらも気持ちが楽になります。
お風呂上がりに、おやつやお茶の時間をはさむ家庭もあります。のどを潤して一息つくと、気持ちが切り替わりやすくなります。「ドライヤーが終わったら、好きな絵本を読もう」のように、その後に楽しみが待っている流れをつくるのも、よく知られた工夫です。
きょうだいがいる場合は、先に乾かす子の様子を見せる方法もあります。「お兄ちゃん、気持ちよさそうだね」と自然に見せておくと、興味がわいて自分から近づいてくることもあります。ただし、比べるような言い方は避けて、あくまで見せるだけにとどめましょう。
髪が長い子や、ドライヤーを嫌がる子が「ぬれたまま」で過ごすとき

髪をぬれたままにしておくと、風邪をひかないか、頭がかゆくならないかと心配になりますよね。とくに寒い季節は、保護者の方の不安も大きくなります。けれど、そこで無理に押さえつけて乾かすと、ドライヤーそのものへの苦手意識が強くなってしまうこともあります。
たとえば、こんな順番で考えてみる方法があります。
ドライヤーを使えない夜のかんたんな代わり
・吸水性のよいタオルで、頭をぽんぽんと包むように拭く
・タオルドライのあと、うちわや手で軽くあおいで乾かす
・部屋をあたたかくして、自然に乾くのを待つ
・寝る前に、枕元にバスタオルを敷いておく
ドライヤーを使わない日があっても、まったく問題ありません。「乾かせなかった」と自分を責めないことが、いちばん大切です。毎日完ぺきにできなくても、親子の気持ちが落ち着いていることのほうが、長い目で見ると大事です。
髪を短めに整えると、乾かす時間そのものが短くなり、子どもの負担も減ります。美容院で「乾きやすい長さにしたい」と伝えてみるのも一案です。また、しっかり吸水してくれるマイクロファイバーのタオルや、フード付きのバスローブを使うと、タオルドライだけでかなり水分を取れるようになります。
ドライヤーを嫌がる子に、家庭でできる工夫
音と風に少しずつ慣れる、ドライヤーを嫌がる子への進め方

苦手なものに慣れていくときは、いきなり本番に挑戦せず、ごく小さな段階に分けるのが基本だと言われています。ドライヤーなら、次のようなステップが考えられます。
どの段階でも、「できたね」とそっと認めてあげてください。うまくいかなかった日は、前のステップに戻って大丈夫です。進むスピードは、子どもが決めていいと考えると、保護者の方も肩の力が抜けます。
弱い風や、ぬるい風から始めるのもひとつの方法です。多くのドライヤーには、風の強さや温度を切り替える機能があります。最初は「冷風」だけを使って、音とそよ風に慣れるところから試している家庭もあります。
音が気になる子には、ドライヤーの吹き出し口を少し離して使う、タオルごしに風を当てる、といった工夫もあります。また、静音タイプのドライヤーを選ぶ、洗面所の外の廊下から音を聞かせるなど、音の大きさそのものを調整する方法も考えられます。
髪を乾かす場所を変えてみるのも手です。洗面所は音が響きやすいので、カーペットのある部屋やリビングに移すだけで、音の感じ方がやわらぐことがあります。いすに座って、好きな動画や音楽を流しながら乾かすと、意識がそちらに向いて、ドライヤーの存在が気になりにくくなる子もいます。
こうした工夫は、ほんの小さな変化に見えるかもしれません。それでも、「少し楽になった」「前より近づけた」という積み重ねが、いつの間にか大きな変化につながっていきます。焦らず、昨日より一歩だけ進めたら十分だと考えてみてください。
なお、嫌がる様子が強くて日常生活に大きく響くと感じるときや、ドライヤー以外にもさまざまな場面で強い苦手さが続くときは、園や学校の先生に様子を伝えてみるのもよいでしょう。家庭だけでなく、まわりの大人が情報を共有できると、子どもへの関わり方のヒントが増えます。
見通しと「選べる」安心で、ドライヤーを嫌がる子を支える

ドライヤーの大きなこわさのひとつは、「いつ終わるかわからない」ことです。そこで、終わりが見えるように伝えると、安心しやすくなることがあります。
たとえば、「歌を一曲うたい終わるまで」「砂時計が落ちるまで」「10まで数えたらおしまい」といった形です。タイマーを目に見える場所に置いておくと、子どもも見通しを持ちやすくなります。

そっか、「いつ終わるか」が分かれば、ちょっと頑張れるのかも! わたしも歯医者さんで「あと3分」って言われると安心するもん。

その調子だわん! それに、「どっちがいい?」と選ばせるのも効果的なんだわん。選べると「自分で決めた」という気持ちになるわん。
「先に右側から乾かす? それとも左側?」「ママがやる? 自分でやってみる?」のように、選択肢を二つ用意すると、受け身だった気持ちが少し動き出します。さらに、好きなキャラクターのドライヤーカバーを選んだり、鏡の前で「美容院ごっこ」にしたりと、遊びの要素を足している家庭もあります。
ぬいぐるみを先に「乾かしてあげる」役にするのも、おすすめの遊びです。子どもが「お世話をする側」になると、ドライヤーが「こわいもの」から「自分が使える道具」に変わっていきます。ぬいぐるみが気持ちよさそうにしている様子を見せるだけで、興味を持ってくれる子もいます。
たとえば、ぬいぐるみに「あついかな? だいじょうぶ?」と声をかけながら乾かす遊びを数日続けると、子どもが自分から「ぼくもやる」と言い出す場面が出てくることがあります。遊びの中で安心できる体験を重ねておくことが、本番の日の落ち着きにつながります。
ポイントは「予告・見通し・選択」の三つです。「今から乾かすよ」と予告し、「あと少しで終わるよ」と見通しを伝え、「どっちからにする?」と選んでもらう。この流れを毎日くり返すと、少しずつ落ち着いていく子もいます。
同じようなお悩みは、シャンプーでもよく聞かれます。気になる方は、こちらもあわせてどうぞ。

まとめ:ドライヤーを嫌がる子と、ゆっくり進めるために
ドライヤーを嫌がる子の親が、ひとりで抱え込まないために

毎日のことだからこそ、ドライヤーの時間は親にとっても重い負担になりがちです。うまくいかない日が続くと、「私の関わり方が悪いのかな」と落ち込んでしまうこともあるでしょう。でも、ドライヤーを嫌がるのは、子どもなりのこわさのサインです。保護者の方のせいではありません。
ほかの家庭がどうしているのかを知りたいときは、園の先生や、身近な子育て仲間に話してみるのもひとつです。「うちもそうだよ」のひとことで、肩の荷がふっと軽くなることがあります。一人で抱え込まなくて大丈夫です。
それでも、夜になると気持ちが重くなることはあると思います。そんなときは、「今日は髪が乾かなくても、お風呂に入れただけで十分」と、ハードルを下げてみてください。完ぺきな親を目指さなくても、子どもはちゃんと安心して育っていきます。
パートナーや祖父母と役割を分けるのもひとつの方法です。ドライヤーの担当を日替わりにするだけで、「今日は私じゃない」と思えて、気持ちに余裕が生まれます。担当が代わったときに、子どもの反応が変わることもあるので、ほかの人のやり方を見るヒントにもなります。


ほっとした〜。うちの子だけじゃないんだ…! 明日から、まずドライヤーを見せっこするところから始めてみるね。

いい心がけだわん。うまくいかない日があっても、チャレンジしたことそのものを、ちゃんとねぎらってあげるわん。
今日からできる、小さな一歩

最後に、この記事のポイントをまとめます。ドライヤーを嫌がる理由は、音・熱・風・髪の感触など、子どもによってちがいます。まずは「何がいちばん苦手なのか」を観察してみてください。
次に、いきなりドライヤーを使うのではなく、見る・触る・音を聞く、という小さな段階に分けて進めます。そして、予告・見通し・選択の声かけを添えることで、子どもが安心して取り組める環境をつくっていきます。
それでも毎日がうまくいくとは限りません。うまくいかない日は、うまくいかない日でいいのです。髪が乾ききらなくても、親子で笑って眠れたなら、それは立派な「いい夜」です。ドライヤーの時間を通して、子どもが「わかってもらえた」と感じられるように、これからも寄り添っていきましょう。
今日からできる小さな一歩
・ドライヤーを、スイッチを入れずに一緒に見てみる
・冷風や弱風から、音に慣れる時間をつくる
・「予告・見通し・選択」の三つを声かけに入れる
・乾かせない日があっても、自分を責めない
毎日少しずつでも、子どものペースを大切にしていけば、ドライヤーの時間が親子のほっとする時間に変わっていく日がきっと来ます。今日のあなたの頑張りも、ちゃんと子どもに届いています。
アイキャッチ画像:Photo by Shereese Kalawa on Pexels



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