マット運動が苦手な子の気持ちと、つまずきやすい理由
こんにちは!おやまどの鈴木です。
マット運動が苦手な子が感じている、体がひっくり返る怖さ

体育の時間にマットが出てくると、急に表情がかたくなる。「お腹が痛い」と言い出す。そんなマット運動が苦手な子の姿に、どう声をかけたらいいか迷う方もいるのではないでしょうか。
この記事では、マット運動が苦手な子がつまずきやすい理由と、家庭や学校でできる工夫を、やさしい言葉で整理していきます。「うちの子だけ?」と感じたときのヒントになればうれしいです。
大人にとって前転は、ただ転がるだけの動きに見えます。けれど子どもにとっては、頭の位置が足より下にくる、ふだんの生活にはほとんどない姿勢です。目に入る景色がぐるりと変わり、体がどこを向いているのか分かりにくくなります。
この「上下がひっくり返る感じ」を怖いと感じる子は、少なくありません。はじめて体験する動きなら、なおさらです。怖さを感じるのは、体を守ろうとする自然な反応ともいえます。
さらに、目が回る感覚や、頭に血が上るような感じが苦手な子もいます。体のバランスをとる感覚は、一人ひとりちがいます。同じ回転でも、ある子は平気で、ある子は気持ちが悪くなる、ということもあるのです。
子どもは、自分の感覚をうまく言葉にできないことがよくあります。「こわい」「いや」としか言えない背景に、回ったときの感じ方のちがいが隠れていることもあります。
たとえば、よくある例として、こんな場面を想像してみてください。先生が「はい、前転してね」と言う。まわりの子は、すっと転がっていく。けれど、その子は「頭をどこにつけるの? 首が痛くならない?」と頭の中がいっぱいになり、マットの前で固まってしまう。やる気がないのではなく、考えることが多すぎて動けないということもあります。

わたし、てっきり「慣れていないだけ」だと思ってたの…。

それは違うわん! 慣れだけではなく、ひっくり返る感覚そのものが難しい子もいるんだわん。まずは「何が一番こわいのか」を聞いてあげるわん。
マット運動が苦手な子に多い、腕と首で体を支える感覚の難しさ

前転や側転では、腕や首、背中で自分の体重を受け止める場面があります。ふだんの生活では、腕で体を支える機会は多くありません。そのため、「どのくらい力を入れればいいのか」が分かりにくいことがあります。
力が入りすぎると、体がかたくなって転がりにくくなります。反対に力が抜けすぎると、頭や首に体重がかかって痛い思いをしてしまうこともあります。一度「痛かった」「ぶつけた」という経験をすると、次からマットが怖くなる子もいます。
手のひらや指先で床を押す感覚も、人によって差があります。たとえば、手首をぐっと曲げて床につくだけで違和感を覚える子もいます。見た目では分かりにくいのですが、本人にとっては思った以上にきつい動きということもあるのです。
体重の支え方は、腕だけで決まるものではありません。お腹や背中、足の力が合わさって、はじめて安定します。どれか一つが弱いと、ほかの部分に負担がかかり、動きがぎこちなく見えることもあります。
ふだんの遊びで、鉄棒にぶら下がる、雲梯(うんてい)で移動する、四つ足で進むといった経験が少ないと、腕で体を支える感覚がつかみにくい場合もあります。これは、経験の機会の差であって、育て方の問題ではありません。
こうした「体の使い方の感覚」は、年齢とともに少しずつ育っていくと言われています。いまできないことが、ずっとできないわけではありません。ゆっくり慣れていく時間を見守る、という考え方もあります。
マット運動が苦手な子が戸惑う、動きの順番と見通しの持ちにくさ

前転ひとつにも、実はたくさんの手順が詰まっています。しゃがむ、手をつく、頭を入れる、足で床を蹴る、背中を丸める、転がる、立ち上がる。大人は無意識にやっていますが、子どもは一つひとつ意識しながら動いています。
先生の説明が「手をついて、おへそを見て、ころんと回って」のように一度に何個も出てくると、順番を覚えきれないことがあります。耳で聞いた説明を、すぐ体の動きに変えるのが苦手な子もいます。
また、お手本を見ても、自分の体に置きかえて考えるのが難しい場合があります。見ている向きと、実際にやる向きは違うからです。
たとえば、「回る」という言葉ひとつでも、人によって思い浮かべる動きはちがいます。「体を丸めて、ころんと転がる」のか、「足を高く上げて、ぐるりと回る」のか。言葉が広すぎると、子どもは何をすればいいのか分からなくなります。
先生や保護者の側が、短い言葉で、一つずつ伝えるだけでも、動きやすさは変わってきます。「まず手をつく」「次におへそを見る」のように、一度にひとつずつです。
そんなときは、動きを小さく区切って、絵や図で見せる方法を取り入れている方もいます。「できなさ」ではなく「見通しの持ちにくさ」と考えると、声かけの工夫が見つかりやすくなります。
家で様子を見るときのヒント
・マットを見ただけで表情が変わるか、動きの途中でとまるか
・頭を下げる姿勢をいやがるか、腕で支えるのをいやがるか
・説明を聞いたあと、体の動きにつなげるまでに時間がかかるか
・痛かった・怖かったという体験が、きっかけになっていないか
マット運動が苦手な子が、とくに困りやすい場面
マット運動が苦手な子が、前転・後転・側転で感じるこわさ

学校で行うマット運動には、いくつかの種類があります。それぞれ、苦手になるポイントが少しずつ違うと言われています。
| 動き | 苦手になりやすいポイント |
|---|---|
| 前転 | 頭を入れる怖さ、首への体重のかかり方、立ち上がる力 |
| 後転 | 後ろが見えない不安、腕で床を押す力、回転の勢い |
| 側転 | 腕で体を支える力、体を横向きにする向きの感覚、足の動き |
| 開脚前転・ブリッジ | 体をそらす・開く動きの難しさ、手足の位置づけ |
とくに後転は、後ろが見えないまま転がるため、苦手と感じる子が多いようです。「どこに頭がいくの?」と不安になり、動きがとまってしまうこともあります。
ブリッジや側転のように、体をそらす・ひねる動きは、見た目より難しい場合があります。「みんなできるのに、自分だけ」と感じると、気持ちが下がってしまうこともあります。
側転や開脚前転のように、一つの動きの中に「手をつく」「足を上げる」「体をひねる」が重なるものは、とくに動きの順番が難しくなります。どこで手をつき、どこで足を上げるのか、頭の中で整理する時間が必要です。
運動会や発表の前に、まとめて練習する機会があると、短い期間で一気に仕上げなければと焦ってしまいがちです。けれど、体が覚えるまでには時間がかかります。焦らず、少しずつ慣れていくくらいの気持ちが、ちょうどよいこともあります。
苦手な動きは子どもによって違います。「全部が苦手」ではなく、「この動きのここが苦手」と分けて見てみると、対応も具体的になります。
マット運動が苦手な子がつまずきやすい、順番待ちとみんなの視線

マット運動の授業では、順番に一人ずつ演技をする場面があります。まわりに見られていると感じるだけで、体がこわばってしまう子もいます。
順番を待つ間、前の子の転がる様子を見ているうちに、「次は自分だ」と緊張が高まっていきます。待ち時間が長いほど、不安が大きくなることもあります。
また、着替えや移動、マットを運ぶ準備など、運動そのもの以外の場面で疲れてしまう子もいます。体育館のにぎやかさや、先生の指示が次々に変わる環境が、つらいと感じることもあります。
たとえば、体育が始まる前から「今日はマット運動かな」と心配になる子もいます。そのまま朝から元気がなくなったり、「学校に行きたくない」と話したりすることもあります。
ほかにも、体育着に着替える時間がたりない、体育館のにおいや音が気になるなど、運動以外の理由が重なる子もいます。どこで疲れが出ているかは、子どもによってちがいます。
そのときは、「マット運動が嫌いなのかな」と決めつけず、何が心配なのかをゆっくり聞いてみましょう。「見られるのがいやなの?」「頭がこわいの?」と選択肢を出すと、答えやすいことがあります。


えっ、体育の前から心配になっちゃう子もいるの…? うちの子もそうかも。

うん、あるんだわん。心配な気持ちを軽く扱わないで、まずは「そうなんだね」って受けとめてあげるわん。
マット運動が苦手な子に、家庭でできる練習の工夫
マット運動が苦手な子と、遊びの中で体を動かしてみる

マット運動の練習というと、「家にマットがないから難しい」と思われるかもしれません。けれど、遊びの中で、体の感覚を育てることはできます。
たとえば、床に敷いた布団の上で、ごろごろ転がるだけでも十分です。横向きにゴロゴロ、うつぶせ、仰向けと、体の向きを変えて遊びます。「転がる=楽しい」という経験を重ねていくのが大切です。
ほかにも、「くまさん歩き」(手と足で歩く)や、「うさぎ跳び風」(手をついて足を持ち上げる)のように、腕で体を支える遊びがあります。親子で競争したり、動物のまねをしたりして、楽しく取り入れている方もいます。
おうちでマットがわりにできるのは、布団やクッション、ヨガマットなどです。やわらかすぎると、かえって手をつきにくくなることもあります。体が沈みすぎない、ほどよい固さのものを選ぶと動きやすいと言われています。
「やってみようか」と声をかけても、乗り気でないときは、親が先にやってみせるのも一つの方法です。子どもは、親がたのしそうにしている姿を見ると、「ちょっとやってみようかな」と思えることがあります。
ゆりかごの動き(体育座りで背中を丸めて前後にゆれる)も、転がる動きの準備になると言われています。怖くない・痛くない・楽しいを、いちばんの目安にしましょう。
マット運動が苦手な子に、できたことを見つけて伝える声かけ

練習のとき、声かけで気をつけたいのは、「できたこと」を先に伝えることです。「ちゃんと回れなかったね」ではなく、「マットの上に立てたね」「手をつけたね」のように、事実を認める言葉が助けになります。
小さなステップに分けて、「今日は手をつくだけ」「今日は頭を下げるだけ」と決める方法もあります。一回の練習で全部を終わらせようとせず、終わりの見える形にすると、安心して取り組めます。
子どもが怖がっているときは、無理に進めないことも大事です。「今日はここまでにしようか」と区切ることで、「やめてもいいんだ」と安心し、次の挑戦につながることもあります。
ほめるときは、結果だけでなく、やってみた気持ちに目を向けてみましょう。「こわかったのに、やってみたんだね」「おなかに力を入れてたね」のように、行動や頑張りを具体的に言葉にすると、子どもに伝わりやすくなります。
反対に、「どうしてできないの?」「何回やったら分かるの?」といった言葉は、本人の自信を小さくしてしまうことがあります。親も不安なときは、声にとげが出てしまうものです。そんなときは、深呼吸をして、いったん練習をお休みにしても大丈夫です。
また、学校の先生に、苦手なポイントを具体的に伝えておく方法もあります。「後転が不安のようです」「見られるのが苦手なようです」と伝えると、授業での関わり方を工夫してもらえるかもしれません。

まとめ:マット運動が苦手な子と、無理なく進めるために
マット運動が苦手な子の理由と工夫を、あらためて整理する

マット運動が苦手な子は、怠けているわけではありません。体がひっくり返る怖さ、腕と首で体を支える感覚、動きの順番、まわりの視線など、いくつもの理由が重なっていることがあります。
おうちでは、遊びの中で転がる・支える経験を重ねたり、できたことを言葉にして伝えたりしながら、小さな一歩を積み上げていくのが近道です。
たとえば、「前転はこわいけれど、ゆりかごは平気」「後転はいやだけれど、マットの上を転がるのは好き」というように、できる部分と苦手な部分は、子どもによってちがいます。できる部分を土台に、少しずつ広げていくやり方もあります。
また、苦手な気持ちは、体の問題だけでなく、まわりの目や、過去の失敗の記憶とも結びついていることがあります。だからこそ、技術を教える前に、安心できる場面をふやすことが助けになります。
苦手な動きを分けて考える、見通しを伝える、無理をさせない。この3つを意識するだけでも、子どもの表情が少しずつ変わっていくことがあります。

そっか、「できた・できない」より、「安心して体を動かせるか」が大事なんだね!

そのとおりだわん! 小さな一歩を、いっしょに喜んでいくわん。
一人で抱え込まず、マット運動が苦手な子と一緒に進んでいく

マット運動が苦手な子を見ていると、「このまま体育嫌いになってしまわないかな」と心配になるかもしれません。でも、体の使い方も、気持ちの整え方も、少しずつ育っていくものと言われています。
体育は、できる・できないが目に見えやすい教科です。だからこそ、家では「できなくても大丈夫」と思える時間をつくってあげたいところです。体を動かすことそのものを、楽しいと思える経験が、長い目で見て力になっていきます。
ある日、突然できるようになることもあります。昨日までこわかった動きが、ふとした拍子に「あれ、できた」となるのも、子どもの成長の面白いところです。
学校の先生や、まわりの保護者の方と情報を分かち合うだけでも、気持ちが軽くなることがあります。一人で抱え込まず、まわりの力も借りながら進めていきましょう。
マット運動が苦手な子のペースを大切にしながら、ゆっくり、できるところから進めていきましょうね。
アイキャッチ画像:Photo by Pavel Danilyuk on Pexels



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