並ぶのが苦手な子の気持ちと、つまずきやすい理由
こんにちは!おやまどの鈴木です。
並ぶのが苦手な子が感じている、順番と距離の分かりにくさ

朝の集合、給食の配膳、トイレの前、お店のレジ。子どもの生活には、列に並ぶ場面がたくさんあります。ところが、並ぶ場面になると、列から外れてしまう、前の子を押してしまう、じっとしていられなくなる。並ぶのが苦手な子を前に、「どうしてみんなと同じようにできないの?」と戸惑う保護者の方もいるかもしれません。
この記事では、並ぶのが苦手な子がつまずきやすい理由と、家庭や園・学校でできる工夫を、やさしい言葉で整理していきます。「うちの子だけ?」と感じたときの、ヒントになればうれしいです。
大人にとって、列に並ぶことは当たり前に思えます。けれど、子どもの目線で考えると、実はとてもたくさんのことを同時にこなす必要がある場面です。「どこが列の最後か」を探す。前の人との間をどのくらいあけるか決める。順番が来るまで待つ。前の人が動いたら、タイミングよく進む。
どれも、目に見えないルールです。「列の最後」は、はっきりとした目印がないことも多く、小さな子には、どこが最後なのか分かりにくい場合があります。前の人との距離も、「近すぎず遠すぎず」と言われても、感覚をつかむのがむずかしいものです。
さらに、列は人が動くたびに形が変わります。前の子が横に出たり、後ろの子が割り込んだり。そのたびに「いま自分はどこにいるのか」を考えなおす必要があります。状況を整理するのが得意でない子にとっては、頭の中がいっぱいになってしまう場面です。
たとえば、よくある例として、こんな場面を想像してみてください。先生が「2列に並んでね」と言う。まわりの子が、すっと2つの列を作る。けれど、その子は「2列」がどういう形なのか、ぱっと思い浮かばない。まわりを見て、やっと真似しようとしたときには、もう列が動き出している。「分からない」と言えないまま、立ちつくしてしまうこともあります。

わたし、てっきり「やる気の問題」だと思ってたの…。

それは違うわん! 並ぶことは、考えることがたくさんある場面なんだわん。まずは「どこでつまずいているか」を見てあげるわん。
並ぶのが苦手な子に多い、前の人との距離感のつかみにくさ

並ぶのが苦手な子の中には、人との距離感をつかむのが苦手な子もいます。前の子にくっつきすぎてしまう。逆に、間があきすぎて、列がばらばらになってしまう。どちらも、距離の感覚が、まだ育ちきっていない場合に起こりやすいと言われています。
距離の感覚は、目で見て判断するだけでなく、体で覚えていくものでもあります。腕をのばしたらどのくらい届くか、ひと足分あけるとどのくらい離れるのか。こうした体の感覚は、遊びや運動の中で少しずつ育っていきます。
また、人にふれられることが苦手な子にとって、列はつらい場所になることもあります。前後の人との距離が近いと、体がふれる、息が近い、においがするなどの刺激が重なります。「ぴったりくっつくのはイヤ」だから、列から離れてしまう。そんな場合もあるかもしれません。
逆に、人との距離が近いほうが安心する子もいます。前の子のうしろにくっついて、背中にさわってしまう。これは、安心したい気持ちの表れだとも考えられます。どちらの場合も、「ダメ」と叱る前に、その子の感覚を想像してみたいですね。
列に並ぶとき、体のバランスや姿勢を保つ力も使います。じっと立っているのは、実は筋肉を使う動作です。体幹の力がまだ育ちきっていない子や、疲れやすい子は、立ち続けることがつらくなって、体をゆらしたり、しゃがみこんだりすることがあります。
人混みが苦手な子の記事も、あわせて読んでみてください。刺激が多い場所でどんな感じ方をするのか、参考になります。

並ぶのが苦手な子の「待つ時間が分からない」不安

列に並ぶとき、もう一つ大きいのが、待つ時間の見通しです。大人は、列の長さを見れば「あと5分くらいかな」と予想できます。けれど、子どもにとっては、いつまで待てばいいのか分からない状態は、不安につながります。
「終わりが見えない」のは、大人でもしんどいものです。ましてや、時間の感覚がまだ育っていない小さな子にとっては、「ずっと立っていなくちゃいけない」と感じることもあります。そのうち、じっとしていられなくなり、列から離れてしまうのは、自然な反応かもしれません。
また、待っている間にやることがないのも、つらい点です。何もせずにじっと立つのは、実はとてもむずかしいこと。目に入るものに気をとられ、動きたくなる。話しかけたくなる。ふざけたくなる。これは、待つ時間をうめるための、子どもなりの行動だとも言えます。
待つ時間が苦手な子には、「じっとしていなさい」という声かけだけでは、むずかしい場合があります。待ちながらできること(指を折って数える、手遊びをする、心の中でうたう)を一緒に決めておくと、待つ時間が少し楽になることもあります。
順番を待つこと全般が苦手な子もいます。小学生の「順番が待てない」についての記事もあります。

並ぶのが苦手な子が、とくに困りやすい場面
朝の整列や移動で、並ぶのが苦手な子が戸惑うとき

園や学校の生活で、並ぶ場面が一番多いのは、朝の整列や教室移動かもしれません。「並んでください」「静かに歩いてね」という声が飛びかう中で、自分の場所を見つけ、列を作る。これは、慣れないうちは大変な場面です。
たとえば、よくある例として、次のような様子があります。先生の「並びましょう」の声がかかっても、すぐに動き出せない。まわりの子が動いてから、あわてて列の最後に向かう。たどり着いたときには、列はもう動き始めている。そのまま、列の外を歩いてしまう。
これは、指示を聞き取るのに時間がかかる、まわりの動きを見て判断するのが遅れる、といった理由で起こることがあります。本人は、やる気がないわけではなく、「どうしていいか分からない」まま、焦っているのかもしれません。
ロッカーや靴箱の前で並ぶ場面も、同じです。自分の場所を探すことと、順番を待つことを同時に行うため、頭の中がいっぱいになってしまいます。靴を履き替える手順が決まっていないと、さらに混乱しやすくなります。
こうした場面では、手順を一つずつ分けて伝えると、動きやすくなる子がいます。「まず、くつをぬぐ」「つぎに、くつ箱に入れる」「それから、うわばきをはく」と、順番に声をかける、あるいは絵で貼っておく。見て分かる手順があると、考える負担がぐっと減ります。

集団行動の場面で、うちの子だけ遅れちゃうと、わたしまでドキドキするの…。

気持ちは分かるわん。でも、遅れている子は、がんばっている最中かもしれないわん。やり方が見えるようになると、少しずつ動きやすくなるわん。
給食の配膳やトイレ前で、並ぶのが苦手な子がつまずくとき

給食の配膳は、並ぶ・待つ・受け取るを、短い時間でこなす場面です。順番を待つ間に、おいしそうなにおいがしてくる。自分の分がいつ来るのか分からない。そのうち、がまんできなくなって、前に割り込んでしまう。そんなことも起こりがちです。
トイレ前の列も、むずかしい場面です。トイレは、がまんすることがむずかしい場所です。「もう少し待ってね」と言われても、体の感覚が先に立って、じっとしていられなくなる子もいます。ここで無理に待たせようとすると、不安が強まることもあります。
こうした場面では、並ぶ位置が見て分かる工夫があると助かります。床にテープで目印をつける、足形のマークを貼る、といった方法です。目で見て分かるルールは、言葉だけの指示より、ずっと理解しやすいと言われています。
園や学校でどんな工夫ができるかは、場所によってちがいます。まずは、先生に「家ではこんな様子です」と伝えておくことから始めてみましょう。「ここで困っているようです」と共有できれば、一緒に工夫を考えやすくなります。
並ぶのが苦手な子に、家庭でできる練習の工夫
並ぶのが苦手な子と、遊びの中で順番を体験してみる

並ぶ練習は、いきなり本番の場面で行うより、遊びの中で少しずつ体験するほうが、気持ちがラクです。家庭でできる、簡単な方法をいくつか紹介します。
まず、ぬいぐるみやおもちゃを並べる遊びです。「くまさんが先頭ね」「うさぎさんは2番目」と、順番を声に出しながら並べていきます。「前・うしろ・最後」といった言葉も、遊びの中で自然に覚えられます。
次に、「電車ごっこ」や「しっぽとりゲーム」です。親子で前後に並んで、ゆっくり歩く。最初は、「前の人のうしろを歩く」感覚を、楽しみながら体験します。慣れてきたら、きょうだいや友だちを交えて、列を長くしてみるのもよいでしょう。
また、順番に何かをする遊びもおすすめです。すごろくや、トランプ、ジェンガなど、順番に手を出すゲームは、「待つ」「自分の番が来る」を、自然に体験できます。勝ち負けのないゲームや、短い時間で終わるものから、始めてみてください。
家庭でできる順番遊びの例
・ぬいぐるみを順番に並べる
・電車ごっこで、前の人のうしろを歩く
・すごろくやカードゲームで、順番を待つ
・おやつを、順番に取る
・お風呂の順番を、カレンダーで見える化する
遊びの中で、待つ時間はできるだけ短くから始めます。5秒、10秒と、少しずつのばしていきます。「待てたね」と、さらりと伝えるくらいが、プレッシャーになりにくいようです。

ぬいぐるみを並べる遊び、うちでもやってみようかな。

いいわん! 遊びの中なら、子どもも構えずに順番を体験できるわん。
並ぶ場面の見通しを、前もって伝えておく工夫

並ぶ場面に強い不安がある子には、前もって見通しを伝えておくことが、大きな支えになります。「何をするのか」「どこで並ぶのか」「どのくらい待つのか」を、事前に知っておくだけで、安心できる子は少なくありません。
お出かけの前に、絵や写真を使って説明するのも一つの方法です。「このお店に行くよ。レジに並ぶよ。前に2人いるよ。そのあと、私たちの番だよ」と、流れを順番に伝えます。スマートフォンで、行く場所の写真を見せておくのもよいでしょう。
| 場面 | 前もって伝えておきたいこと |
|---|---|
| お店のレジ | 何人くらい並んでいるか。どのくらいで順番が来るか |
| トイレの前 | 自分の前に何人いるか。「もう少しだよ」と、数を数える |
| 電車やバス | どこに並ぶか。乗り込む順番。座れるかどうか |
| 学校の整列 | どこに立つか。誰の後ろか。どのくらい待つか |
待つ時間のための小さなアイテムを持たせるのも、一つの方法です。たとえば、小さな絵本、シール帳、ポケットに入る小さなおもちゃなど。ただし、学校や園では持ち込みのルールがあるので、先生に確かめてから使うようにしてください。
「列の最後」が分かりにくい子には、目印を決めておく方法もあります。「青い帽子の子のうしろ」「先生のとなり」のように、目で見て分かる目印があると、迷いにくくなります。
まとめ:並ぶのが苦手な子と、無理なく進めるために
並ぶのが苦手な子の気持ちと工夫を、あらためて整理する

ここまで、並ぶのが苦手な子の理由と、家庭でできる工夫を見てきました。あらためて、大切なポイントを整理します。
並ぶのが苦手な理由は、順番の見通し・距離感・待つ時間・まわりの刺激・体の感覚など、さまざまです。「わがまま」ではなく、その子なりの感じ方があるのだと、受けとめてあげたいですね。
工夫としては、遊びの中で順番を体験する、場面の見通しを前もって伝える、目印を決めておく、待つ時間を短くから始める、などがありました。どれも、すべてを一度にやる必要はありません。
おすすめは、一つだけ選んで、一週間ほど試してみることです。たとえば「ぬいぐるみを並べる遊びをする」だけ、「お出かけ前に流れを伝える」だけ。変えるところが一つなら、うまくいったかどうかも分かりやすくなります。
要点:並ぶのが苦手な子には、「どこでつまずいているか」を探して、見通しを伝える。遊びの中で順番を体験し、小さなステップで進める。

うちの子の「できない」の理由が、ちょっと見えてきた気がするの!

その気づきが大きな一歩だわん。ゆっくり一緒に進めていくわん。
一人で抱え込まず、並ぶのが苦手な子と一緒に進んでいく

並ぶことで悩んでいると、「ほかの子はできているのに」と、つい比べてしまうことがあります。でも、感じ方も慣れるスピードも、子どもによってちがいます。比べなくて大丈夫です。
集団での行動は、年齢とともに少しずつ身についていくものと言われています。今日できなかったことが、半年後には自然にできるようになっている、ということもあります。たとえば、「列の最後まで、一人で歩いていけた」「3人分だけ待てた」。そんな小さな変化を見つけてあげてください。
もし、なかなか前に進まないように感じたときも、焦らなくて大丈夫です。子どもは、できるようになる前に、「分かってきた」という段階があります。目に見える行動に出るのは、そのあとです。見えないところで、きっと少しずつ育っています。
園や学校の先生とも、家での様子や、試した工夫を共有しておくと、無理のない形を一緒に考えやすくなります。幼稚園での集団行動についての記事も、参考になるかもしれません。

一人で抱え込まず、まわりの力も借りながら進めていきましょう。並ぶのが苦手な子と一緒に、ゆっくり、できるところから進めていきましょうね。
アイキャッチ画像:Photo by Thang Nguyen on Pexels



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