美容院を嫌がる子の気持ちには、ちゃんと理由があります
こんにちは!おやまどの鈴木です。
「髪が伸びてきたから、そろそろ美容院に行こうね」。そう声をかけた途端に、子どもが固まってしまった。泣いて動かなくなった。そんな経験はありませんか。
美容院を嫌がる子は、決して少なくありません。わがままや甘えと決めつけてしまう前に、その子の中でどんなことが起きているのかを、いっしょに整理してみましょう。
この記事では、美容院を嫌がる理由と、行く前の準備、当日の関わり方、そして無理に通わない選択肢まで、家庭でできる工夫を順番にお伝えします。「うちの子だけ?」と感じている保護者の方の、気持ちが少し軽くなればうれしいです。

美容院に行くたびに大騒ぎで、もう行くのが怖いの…。うちの子、ちょっと変わってるのかな。

それは違うわん!美容院を嫌がる子はたくさんいるわん。理由はひとつじゃないから、まずは一緒に整理してみるわん。
髪を切られる感覚が苦手な子もいます

髪の毛は、切られても痛くありません。でも、頭にはさみが近づく感覚や、細かい毛が首すじや顔にちくちく落ちてくる感覚を、とても不快に感じる子がいます。
大人にとっては気にならない刺激でも、肌の感覚がするどい子には「ずっと虫が這っているような感じ」に思えることもあります。切った毛がシャツの中に入ると、もう何も手につかなくなる、という場面も考えられます。
また、頭を触られること自体が苦手な子もいます。ふだん自分で触るのは平気でも、知らない人に急に触れられると、からだが固まってしまうのです。
こうした感覚の受け取り方は、本人の努力や気合いでなんとかなるものではないと言われています。「がまんしなさい」と伝えるより、「ちくちくするんだね」と、まず気持ちを言葉にしてあげるほうが、子どもは安心しやすいようです。
たとえば、ふだんから洋服のタグやくつ下の縫い目を嫌がる子は、髪の毛がちくちくする感覚にも敏感な可能性があります。反対に、洋服はまったく気にならないのに、頭だけは触られたくない、という子もいます。どこに敏感なのかは、子どもによって本当にさまざまです。
肌ざわりや音への敏感さについては、こちらの記事でもくわしく取り上げています。

嫌がり方にも、いろいろな形があります。大声で泣く子もいれば、黙ってうつむく子、逃げ出す子、体がこわばって動かなくなる子もいます。静かに固まっている子は「おとなしくしているから平気」と思われがちですが、内心ではとても緊張している場合もあります。表に出るサインだけで判断せず、様子をよく見てあげてください。
バリカンの音や、待ち時間が不安につながることも

美容院や理容室には、子どもにとって「いつもと違うもの」がたくさんあります。ドライヤーの大きな風の音、バリカンのブーンという音、ほかのお客さんの話し声、シャンプーやパーマ液のにおい。これらが一度に押し寄せてきます。
音に敏感な子は、バリカンの音が聞こえただけで耳をふさいでしまうことがあります。においが苦手な子は、お店に入った瞬間に「いやだ」と言いだすこともあるでしょう。
さらに、待ち時間も大きな壁になります。予約をしていても、前のお客さんが長引いて、10分、15分と待つことがあります。じっとしているのが苦手な子にとって、何が起こるか分からないまま待つ時間は、とても長く感じられます。
嫌がる理由が「痛い」でも「怖い」でもなく、「音」「におい」「待つこと」のどれか、というケースもよくあります。まずは、お子さんが何にいちばん困っているのかを、ゆっくり探ってみましょう。
たとえば、「今日はどこがいちばんいやだった?」と、あとで落ち着いてから聞いてみる方法があります。うまく言葉にできない子には、「音?におい?ちくちく?」と選択肢を出してあげると、指をさして答えられることもあります。理由が分かれば、次に打てる手も見えてきます。

えっ、バリカンの音が理由かもしれないの?わたし、てっきり「はさみが怖いのかな」って思ってたわ〜。

それは違うわん!怖い理由は、はさみだけじゃないわん。音・におい・待ち時間と、いろいろ考えられるわん。
「いつもと違う場所・人」に身構える子もいます

初めての場所や初めて会う人が苦手な子にとって、美容院は緊張しやすい場所です。知らない大人に話しかけられ、大きな鏡の前に座らされ、肩からケープをかけられる。この流れそのものが、「何をされるか分からない」不安になることがあります。
見通しが立たないと不安が強くなる子は、「次に何が起きるか」が分からない状況が続くほど、体に力が入っていきます。前回は大丈夫でも、担当の人が変わっただけで嫌がる、ということも珍しくありません。
また、鏡に映る自分の顔をじっと見るのが苦手、という子もいます。動いてはいけない、じっとしていなければいけない、というプレッシャーも重なります。
たとえば、前回の美容院で髪が目に入った、思ったより短く切られてしまった、という経験が、嫌な記憶として残っていることもあります。過去の出来事を覚えている子は多いので、「前に何かあったかな?」と思い出してみるのも手がかりになります。
「どうして嫌なの?」と問いつめるより、「いつもと違うから、ドキドキするよね」と受けとめるほうが、子どもは自分の気持ちを話しやすくなります。
お店に慣れるまでには、時間がかかる子もいます。かといって、嫌がるたびに諦めてしまうと、髪が伸びて余計に困る、という場面もあるでしょう。そんなときに頼りになるのが、「行く前の準備」と「当日の小さな工夫」です。
ひとつひとつは小さなことでも、組み合わせることで、子どもの負担はぐっと軽くなると言われています。できそうなものから、ひとつずつ試してみてください。
美容院を嫌がる子と、行く前に整えておきたい準備
絵本や写真で、美容院の流れを見せておく

見通しが立つと安心しやすい子には、事前に「美容院でどんなことをするのか」を見せておく方法があります。
たとえば、美容院が登場する絵本を読む、お店のホームページの写真をいっしょに見る、といった方法です。「入る、座る、ケープをかける、髪を切る、流す、終わり」という順番を、絵や写真のカードにして並べておく家庭もあります。
ここで大事なのは、終わりがあることを伝えることです。「最後まで頑張ろうね」ではなく、「このカードまで来たら終わりだよ」と見える形にすると、がんばる範囲が分かりやすくなります。
おもちゃのはさみやくしを使って、お人形や家族の髪を切るごっこ遊びをするのも、ひとつの方法です。遊びの中で役割を交代すると、「切られる側」の気持ちも自然に整理されていくことがあります。
見せ方は、子どもの年齢やタイプによっても変わります。文字が読める子なら、箇条書きのメモでも十分です。まだ小さい子には、実際に使う道具の写真やイラストのほうが伝わりやすいでしょう。前日の夜と当日の朝に、もう一度見せて確認するのも、気持ちの準備になります。
チェックポイント
・入る→座る→ケープ→カット→流す→終わり、の順番を伝える
・「あと何分」「あと何回」と終わりを見える形にする
・子どもが好きな絵本やキャラクターで流れを説明する
・ごっこ遊びで「切る側」「切られる側」を体験する
予約の時間帯とお店選びを、子どもに合わせて変える

嫌がる子には、お店選びと時間帯の工夫も効果があると言われています。
たとえば、平日の昼間や開店直後など、お店がすいている時間を選ぶ方法があります。ほかのお客さんが少なければ、音や人の気配が減り、待ち時間も短くなります。予約の際に「初めてで緊張しやすい子なので、待たずに始めたい」と伝えておくのもよいでしょう。
お店の選び方としては、次のような視点があります。
もし可能であれば、予約をする前に、一度お店を見に行ってみるのもよい方法です。髪を切らずに、お店の前まで行ってみる、店内の様子をちらっと見てみる、というだけでも、「あそこは前に見たところ」という安心感につながります。
予約するときは、子どもの機嫌がよい時間帯も考えてみてください。お昼寝前後や、おなかがすいている時間は避けたほうが、落ち着いて過ごしやすいと言われています。
「前に嫌がったお店には二度と行けない」と考えなくても大丈夫です。お店や担当の人を変えるだけで、すんなり座れる子もいます。
準備がととのっても、当日になると気持ちが揺れるのは自然なことです。大切なのは、うまくいかなかった日があっても、「次はこうしてみよう」と切り替えることです。ここからは、当日の具体的な関わり方を見ていきましょう。
美容院を嫌がる子と、当日をおだやかに過ごす関わり方
座るまでのハードルを、小さく刻む

当日、お店の前で固まってしまうこともあります。そんなときは、「今日は全部切る」と決めすぎないことが大切です。
ハードルを小さく刻んで、「お店に入るだけ」「椅子に座るだけ」「ケープを着けてみるだけ」と、段階を分けてみる方法があります。最初の1回は、お店の中を見て帰るだけ、という日があってもよいのです。
座れたら、「座れたね」「すごいね」と、その場で具体的にほめてあげましょう。小さな成功を積み重ねることで、「ここは怖くない場所かも」という気持ちが少しずつ育っていくと言われています。
また、美容院の人に「この子は初めての場所が苦手で」と伝えておくと、声のかけ方や進め方を工夫してもらえることがあります。伝えることは、お願いではなく、お互いに子どもを支える作戦会議のようなものです。
お気に入りのぬいぐるみやおもちゃを持っていくのも、ひとつの工夫です。手に何かを持っていると、気持ちが落ち着く子もいます。担当の方に、持ったままで切ってもらえるか聞いてみるとよいでしょう。

せっかく予約したのに、座ってくれないと焦っちゃう…。「もう今日はやめる?」って言うのは負けな気がして…えへへ。

負けじゃないわん!「今日は座るところまで」って決めるのも立派な作戦わん。無理に進めて嫌な記憶が残るほうが、あとで大変わん。
髪を切る時間をなるべく短くするために、前髪やサイドなど、気になる部分だけを先に整えてもらう方法もあります。最初から全体を整えようとせず、「今日は前髪だけ」と範囲を決めておくと、子どもも保護者もゴールが見えやすくなります。
「やめたいとき」の合図を決めておく

髪を切っている途中で、「もう無理」となる子もいます。そのときに、うまく言葉にできない子も少なくありません。
そこで、あらかじめ「手を上げたら一回おやすみ」「親の手をぎゅっと握ったら合図」といった、やめたいときのサインを決めておく方法があります。サインを出したら、すぐに手を止めてもらえる、という安心感があるだけで、ふんばれる子もいます。
ここで気をつけたいのは、サインを出したときに、きちんと止まることです。「もう少しだから」と続けてしまうと、「合図を出しても止まってくれない」という経験になり、次回さらに身構えてしまうことがあります。
美容院の方にも、事前に「この子はこういうサインを使います」と伝えておくと安心です。担当の方が慣れている場合は、子どもの様子を見ながら、休憩をはさんで進めてくれることもあります。
たとえば、次のような場面を想像してみてください。途中で子どもが手を上げたとき、美容院の方がすぐにはさみを止め、「だいじょうぶ、ちょっとお休みしようね」と声をかける。ほんの30秒の休憩のあとで、子どもが自分から「もういいよ」と言える。こんな流れが作れると、「自分で選べた」という経験が残ります。
保護者の方は、子どもの横や、見える位置にいるようにしましょう。親の顔が見えるだけで、落ち着く子はたくさんいます。
まとめ:美容院を嫌がる子と、ゆっくり進めていくために
ただし、家で切るときは、安全のために、子どもが動いても危なくないよう、先の丸いはさみを使うなどの工夫をしてください。むずかしいと感じたら、無理に挑戦せず、短時間でできる範囲にとどめましょう。
家で切る、という選択肢もあります

いろいろ試しても難しいときは、無理に美容院へ通わなくても大丈夫です。家で切る、という選択肢もあります。
たとえば、お風呂に入る前に、ケープがわりの大きなゴミ袋や古いシャツを着て切る方法があります。切った毛が肌につきにくく、終わったらすぐ洗い流せるので、ちくちくが苦手な子には向いている場合があります。
前髪だけ家で整えて、全体は数か月に一度だけお店で、というように、組み合わせるやり方もあります。
お店のある日は特別にタブレットで動画を見ながら切る、というルールを作る家庭もあります。映像に集中している間は、切られている感覚が気になりにくい子もいます。ただし、頭が動いてしまうと危ないので、事前にお店の方と相談しておくと安心です。
頑張って切り終えたら、シールを1枚貼る、好きな絵本を1冊読む、といった小さなごほうびを用意しておくのもよいでしょう。ごほうびは「終わったあとの楽しみ」として、事前に伝えておくと、気持ちの切り替えがしやすくなります。

家で切っちゃっていいの?ちゃんとしたお店に行かないとダメなのかなって思ってた…!

ダメじゃないわん!いちばん大事なのは、子どもが安心して過ごせることわん。家でもお店でも、その子に合う方法を選んでいいわん。
「できたこと」を見つけて、次につなげる

今回は座れた。前回よりも5分長くいられた。ケープを着けられた。そんな小さな「できたこと」を、ぜひ見つけてあげてください。
美容院を嫌がる子の多くは、新しい経験や刺激に、人よりていねいに向き合っています。だからこそ、一歩ずつ進めることが、結果的にいちばんの近道になるといわれています。
たとえば、「前回よりも少しだけ長く座れた」「泣かずに入口まで行けた」という変化は、保護者の方から見ると小さなことかもしれません。でも、子どもにとっては、とても大きな一歩です。そこを見逃さずに言葉にしてあげることが、次の自信につながります。
そして、保護者の方自身も、がんばりすぎないでください。「周りの子は平気なのに」「ちゃんと切らなきゃ」と、自分を責めてしまう方もいます。でも、美容院に行けない時期があっても、それは育て方のせいではありません。
美容院を嫌がる時期は、成長にともなって変わっていくことも多いと言われています。今は難しくても、半年後、1年後には、自分から「切りたい」と言い出す日がくるかもしれません。焦らず、その子のペースを信じて待つことも、大切な関わり方のひとつです。
一人で抱え込まなくて大丈夫です。美容院の方や、園・学校の先生、ほかの保護者の方に、「こんなことで困っている」と話してみるだけでも、気持ちが少し楽になることがあります。
髪を切る日が、いつか「ちょっと楽しみな日」に変わるまで。今日できた小さな一歩を、ゆっくり積み重ねていきましょう。
日常の「ちょっと苦手」への関わり方は、こちらの記事でも紹介しています。


アイキャッチ画像:Photo by Nataliya Vaitkevich on Pexels



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