「またお友達を叩いてしまいました」
園や学校の先生からそう伝えられると、保護者は胸が苦しくなりますよね。
相手の子に申し訳ない気持ちと、「どうして何度言ってもやめられないの?」「しつけ方が悪かったのかな」という自責が重なり、インターネットで調べるうちに発達障害という言葉へたどり着くこともあるでしょう。
結論からいうと、お友達を叩くという行動だけで、発達障害と判断することはできません。
子どもが手を出す背景には、言葉で伝えられない、気持ちの切り替えが難しい、興奮すると行動を止めにくい、相手との距離感がわからないなど、さまざまな理由があります。
もちろん、発達特性が行動へ影響している場合もあります。しかし、「発達障害だから叩く」「叩く子は乱暴な性格」と決めつけるのではなく、叩く直前と直後に何が起きているかを丁寧に見ることが大切です。

先生に「今日も叩きました」って言われて、ズーン……。私のしつけが足りなかったのかなって、帰り道ずっと考えちゃった。

叩いたことは止める必要があるけれど、すぐに親のせいと決めなくていいわん。まずは行動の理由を一緒に探すわん。
この記事では、お友達を叩く子どもと発達障害の関係、叩く背景の見つけ方、その場での対応、家庭や園・学校でできる支援について解説します。
お友達を叩くのは発達障害が原因?

子どもがお友達を繰り返し叩くと、発達障害ではないかと心配になる保護者は少なくありません。
発達障害には、自閉スペクトラム症、注意欠如・多動症、限局性学習症などがあり、現れ方は一人ひとり異なります。
衝動を抑えること、相手の気持ちを読み取ること、予定変更へ対応することなどに難しさがある子もいますが、発達障害のある子どもが必ず他人を叩くわけではありません。
叩く行動だけでは発達障害と判断できない
幼児や低学年の子どもは、大人ほど上手に気持ちを言葉へ変えられません。
「貸してほしい」「やめてほしい」「先に使いたかった」「急に取られて驚いた」と言えず、手が先に出ることがあります。
疲れ、空腹、睡眠不足、緊張、騒がしい環境などが重なることで、普段は我慢できる子が叩いてしまう場合もあります。
そのため、一度や二度の出来事だけで診断名へ結びつけるのではなく、頻度、強さ、続いている期間、起こる場面、ほかの困りごとを含めて考える必要があります。
叩く直前・行動・直後の3つに分けて見る
叩く理由を考えるときは、行動だけを見るのではなく、前後の流れを確認します。
| 確認する段階 | 見るポイント | 具体例 |
|---|---|---|
| 叩く直前 | 何が起きたか | おもちゃを取られた、順番を待つよう言われた |
| 叩いた行動 | 誰に、どの程度、何回か | 隣の子の腕を手のひらで1回叩いた |
| 叩いた直後 | 周囲がどう対応し、何が起きたか | 相手が離れた、おもちゃを使えた、先生が来た |
たとえば、おもちゃを取られたときだけ叩くなら、「返して」と伝える方法を知らない可能性があります。
難しい課題を出されたときに叩き、その後課題が中止されるなら、困った状況から逃れるために手が出ている可能性もあります。
叩いた後に大人が長時間付き添うことが続くと、本人に悪意はなくても、「叩くと大人が来てくれる」という経験が積み重なることもあります。

叩いた瞬間ばかり見てたけど、その前に毎回おもちゃを取られてたかも。わたし、てっきり急に怒ってるのかと……。

理由がわかれば、叩く前に「返して」を教えられるわん。行動の前後は支援のヒントだわん。
理由を考えても叩くことはその場で止める
叩く行動に理由があっても、相手を傷つけてよいことにはなりません。
叩こうとしたら、大人が落ち着いて子ども同士の間へ入り、手を止めます。興奮している最中に長い説教をしても、内容が入りにくいことがあります。
まずは「叩かないよ」「手を止めるよ」と短く伝え、相手の子の安全を確認します。
その後、叩いた子を安全で落ち着ける場所へ移し、気持ちが戻ってから何が起きたのかを確認します。
子どもがお友達を叩くのは発達障害?叩く主な理由を解説

叩く行動を減らすには、「ダメ」と繰り返すだけでなく、叩く代わりに何をすればよいかを教える必要があります。
そのためには、子どもが何を伝えようとしていたのかを考えることが第一歩です。
言葉より先に手が出てしまう
自分の気持ちを言葉にする力が育っている途中の子は、「貸して」「まだ使っている」「やめて」と言う前に、相手を押したり叩いたりすることがあります。
言葉を知っていても、怒りや不安が強くなると使えなくなる子もいます。
この場合は、落ち着いている時間に、実際の場面で使える短い言葉を練習します。
叩く代わりに使いたい言葉
- 「やめて」
- 「返して」
- 「まだ使っている」
- 「貸して」
- 「先生、助けて」
- 「今は嫌」
長い文章を言わせる必要はありません。最初は「やめて」の一言や、大人へ助けを求めるカード、手ぶりなどでも構いません。
衝動や興奮を止めることが難しい
注意欠如・多動症の特性がある子の中には、考えるより先に体が動きやすい子がいます。
また、自閉スペクトラム症の特性がある子では、急な予定変更、人との距離の近さ、強い音や混雑などによって不安や負担が高まり、手が出る場合があります。
ただし、これらの特徴があるだけで診断はできません。同じ子でも、疲れている日や刺激の多い場所でだけ起きることもあります。
叩く直前に、顔がこわばる、声が大きくなる、同じ言葉を繰り返す、物を投げ始めるなどのサインがあるなら、その段階で静かな場所へ移動したり、活動を短く休んだりすると予防につながります。

そういえば、夕方の預かり保育で多いのよね。子どもも一日がんばって、やる気スイッチどころか我慢スイッチまで切れてるのかも。

疲れは行動へ影響するわん。叩いた後だけでなく、叩きやすい時間や環境も記録するわん。
叩くことで要求が通った経験がある
子どもは、行動の後に起きた結果から学びます。
叩いたら相手がおもちゃを渡した、嫌な活動が中止になった、大人がすぐに来てくれたという経験が重なると、叩くことが要求を伝える手段として残る場合があります。
これは子どもが計算して悪いことをしているという意味ではありません。ほかに成功しやすい方法を知らない可能性があります。
叩く行動を止めるだけでなく、「貸してと言えたら貸してもらえた」「先生を呼んだら助けてもらえた」という新しい成功体験を増やしましょう。
お友達を叩くのは発達障害?叩いたときの正しい対応
子どもがお友達を叩いたときは、相手の安全を最優先にしながら、叩いた子にも次の行動を教えます。
強く怒鳴って怖がらせるだけでは、目の前では止まっても、別の場面で同じことが起きる可能性があります。
その場では「止める・離す・落ち着かせる」
叩いた直後は、次の順番で対応します。
その場での4つの対応
- 子どもの手を止め、相手から離す
- 相手の子のけがと気持ちを確認する
- 「叩かないよ」と短く伝える
- 叩いた子が落ち着く時間をつくる
興奮している子へ、「どうして叩いたの?」「何回言ったらわかるの?」と問い詰めても、うまく説明できないことがあります。
まずは呼吸や声の大きさ、体の動きが落ち着くのを待ちます。落ち着いた後に、「おもちゃを取られて嫌だった?」など、状況に合う言葉を添えながら確認します。
なお、相手にけがをさせた場合は、謝罪や状況説明を大人同士で丁寧に行う必要があります。ただし、興奮した子どもへその場で無理やり謝らせるだけでは、何を改めればよいのか理解できないことがあります。
叩く代わりの行動を具体的に練習する
「もう叩かないでね」と約束させるだけでは、同じ状況で何をすればよいのかわからないままです。
落ち着いているときに、人形や保護者との遊びを使って、実際の場面を短く再現します。
たとえば、おもちゃを取られた場面なら、「返して」と言う、大人を呼ぶ、少し離れるという行動を練習します。
言葉がすぐに出ない子には、「やめて」と書いたカードや、先生を呼ぶための合図を用意してもよいでしょう。

「叩かない!」を百回言うより、「返して」を練習するのね。よーし、ぬいぐるみ劇場を開幕するわ!

いい作戦だわん!ただし三時間公演は長すぎるわん。短く楽しく繰り返すわん!
家庭と園・学校で記録と対応をそろえる
家庭では叩かないのに園や学校では起きる場合、集団ならではの負担や特定のきっかけがあるかもしれません。
先生へ「なぜ叩いたのでしょうか」とだけ尋ねるのではなく、叩く直前と直後の状況を共有してもらいましょう。
| 記録する項目 | 記入例 |
|---|---|
| 日時・場所 | 火曜日16時、預かり保育の部屋 |
| 直前の状況 | 遊んでいた車を別の子が持っていった |
| 行動 | 相手の肩を手で1回叩いた |
| 大人の対応 | 二人を離し、「返して」を一緒に伝えた |
| その後 | 5分後に落ち着き、別のおもちゃで遊んだ |
数日から数週間記録すると、「夕方に多い」「順番待ちで起きる」「騒がしい部屋で増える」といった傾向が見えることがあります。
家庭と園・学校で、「叩いたら短く止める」「落ち着いたら代わりの言葉を練習する」「言葉で伝えられたらすぐ認める」など、基本的な対応をそろえることも大切です。
お友達を叩く行動は発達障害なのか専門家へ相談する目安

一時的なけんかや、理由が明確な小さなトラブルであれば、環境調整と練習で様子を見られることもあります。
一方、けがにつながる強さや頻度で続いている場合は、家庭だけで抱え込まず、早めに相談しましょう。
頻度や強さが増え、本人も止められない
次のような様子がある場合は、園・学校、自治体の発達相談、児童相談所、発達障害者支援センター、小児科などへ相談する目安になります。
切迫した危険があり、周囲や本人の安全を守れない場合は、通常の予約相談を待たず、医療機関や地域の緊急相談先へ連絡してください。
叩く以外にも発達上の困りごとがある
叩く行動に加えて、次のような困りごとが複数の場面で続いている場合も相談してよいでしょう。
- 順番やルールを待つことが極端に難しい
- 急な予定変更で強く混乱する
- 相手の表情や嫌がる様子に気づきにくい
- 言葉で要求や気持ちを伝えることが難しい
- 大きな音、混雑、触られることを強く嫌がる
- 興奮すると長時間落ち着けない
- 園や学校での活動に継続的な支障がある
該当する項目があるからといって、必ず発達障害であるとは限りません。
相談の目的は、診断名を急いで決めることではなく、子どもの苦手な場面と有効な支援方法を整理することです。
相談するときは具体的な記録を持参する
相談時には、「よく叩きます」だけでなく、具体的な記録を伝えると状況が共有しやすくなります。
- いつ頃から始まったか
- 一週間に何回程度起きるか
- 誰に対して起きやすいか
- 直前に何があったか
- 叩いた後にどうなるか
- 家庭や園で効果のあった対応
- 睡眠、食事、体調の変化
発達相談は、保護者を責めるための場所ではありません。家庭だけで対応しきれないと感じた段階で利用して構いません。

相談って、親のしつけを採点される場所だと思ってたの。でも、この子に合う方法を一緒に探す場所なのね。

その通りだわん。一人で限界まで抱え込む前に、使える支援を頼っていいわん。
お友達を叩く子どもの発達障害との関係についてのまとめ
子どもがお友達を叩くと、相手への申し訳なさや将来への不安から、保護者は自分を責めてしまうことがあります。
しかし、お友達を叩くという行動だけで、発達障害や親のしつけの問題と決めつけることはできません。
言葉で気持ちを伝えられない、興奮を止めにくい、刺激や予定変更の負担が大きい、叩くことで要求が通った経験があるなど、背景は子どもによって異なります。
まずは相手の安全を守り、叩く行動を短く止めます。そのうえで、叩く直前と直後の状況を確認し、子どもが何を伝えようとしていたのかを考えましょう。
目標は、叩いた子を「乱暴な子」として罰することではありません。
叩かなくても気持ちや要求を伝えられる方法を増やし、本人と周囲の子どもが安全に過ごせる環境をつくることです。
対応を続けても改善しないときや、保護者だけでは安全を守れないと感じたときは、園・学校や地域の相談機関へ早めにつないでいきましょう。

叱る回数を増やすんじゃなくて、叩かなくても伝わる方法を増やすのね。これなら私にもできそう!

その調子だわん!安全を守りながら、子どもが成功できる伝え方を一緒に育てていくわん!



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