「計算はできるのに、図形の問題になると急に手が止まる」
「見本と同じ形を写せない」「三角形を回転させると、同じ形だと気づけない」「展開図になるとまったくわからなくなる」
このような様子が続くと、保護者は「発達障害だから図形が苦手なの?」「努力が足りないのかな」「この先、算数についていける?」と心配になりますよね。
結論からいうと、図形が苦手という一つの特徴だけで、発達障害や学習障害と判断することはできません。
図形の学習では、形を見る力だけでなく、位置関係を理解する力、頭の中で形を動かす力、手を使って正確に描く力、問題文を理解する力など、複数の力を同時に使います。
そのため、どこか一つにつまずきがあるだけでも、本人には「図形は全部わからない」と感じられることがあります。
大切なのは、図形問題の点数だけを見るのではなく、どの作業まではできて、どこから難しくなるのかを具体的に分けることです。

三角形をくるっと回しただけで「別の形」って言うのよ。わたし、てっきり三角形にも正面と横顔があるのかと……。

三角形にプロフィール写真はないわん!向きが変わっても同じ形だと捉える力が、まだ育っている途中かもしれないわん。
この記事では、発達障害のある子どもが図形でつまずきやすい理由、苦手な場面の見分け方、家庭と学校でできる支援について解説します。
発達障害の子が図形が苦手になるのはなぜ?
発達障害のある子どもの得意・不得意は、一人ひとり異なります。
発達障害があれば必ず図形が苦手になるわけではなく、反対に、図形や立体の把握を得意とする子もいます。
一方で、視覚的な情報の整理、空間の把握、注意の持続、手順の理解などに難しさがある場合、図形問題で困りやすくなることがあります。
形や位置関係を捉えることが難しい
図形の学習では、「上・下」「右・左」「手前・奥」「内側・外側」など、物の位置関係を理解する必要があります。
位置を表す言葉の理解が曖昧だったり、複数の物の関係を同時に見ることが難しかったりすると、見本どおりに積み木を置く、マス目の同じ位置へ図形を写すといった課題でつまずきます。
たとえば、見本を見て一つずつ同じ積み木を選ぶことはできても、「赤い積み木の右上に青を置く」という位置関係になると混乱することがあります。
これは形そのものを理解していないとは限りません。形は見分けられても、形と位置を同時に処理する負担が大きい可能性があります。
頭の中で図形を回転・分解することが難しい
高学年になると、図形を見たまま理解するだけでなく、頭の中で回転させたり、分割したり、組み合わせたりする問題が増えます。
たとえば、回転した図形から同じ形を探す、立方体の展開図を組み立てた状態で考える、複雑な形を三角形や長方形へ分けて面積を求めるといった課題です。
頭の中だけで形を動かすことが難しい子は、問題を見ただけでは答えを想像できません。
このような場合、「よく考えて」「頭の中で組み立てて」と促しても、必要な手がかりが増えないため、解きやすくならないことがあります。
紙の図形を実際に切る、折る、回す、積み木を動かすなど、頭の中の操作を手元で見える形にすることが有効です。

展開図を見て「頭の中で箱にして」って言われても、私の頭の中では紙のまま床に寝てるのよ〜。

頭の中だけで難しければ、実際に切って組み立てればいいわん。見えるようにするのは立派な学び方だわん。
注意や手先の動かし方が影響している
図形問題の間違いが、形の理解ではなく、注意や手先の操作から生じていることもあります。
定規を押さえながら線を引く、頂点と頂点を正確につなぐ、マス目を数えるといった作業には、目と手を連動させる力が必要です。
形は理解できていても、線がずれる、途中で定規が動く、頂点を一つ飛ばすことによって、不正解になる子もいます。
また、問題用紙に複数の図形や補助線、数字が密集していると、どこを見ればよいのかわからなくなる場合があります。
このタイプの子には、問題を一問ずつ見せる、必要な線だけ色を付ける、不要な部分を紙で隠すなど、注目する範囲を整理する支援が考えられます。
発達障害で図形が苦手な子に見られやすいつまずき
一口に「図形が苦手」といっても、困り方はさまざまです。
苦手な単元名だけでなく、子どもが問題を解く過程を観察すると、必要な支援が見つかりやすくなります。
見本と同じ図形を写せない
見本を見ながら図形を写す課題では、全体の形だけでなく、線の長さ、角度、頂点の位置を順番に確認します。
全体を一度に捉えることが難しい子は、どこから描き始めればよいのかわからず、線を適当につないでしまうことがあります。
この場合は、始点へ印を付ける、一辺ずつ色を変える、「右へ3マス、下へ2マス」のように手順を言葉にする方法が役立ちます。
最初から複雑な図形を写させるのではなく、一本の線、L字、三角形、四角形と段階を細かく分けましょう。
文章題と図形を結びつけられない
図形そのものは理解できても、文章題になると解けなくなる子もいます。
「縦が6センチ、横は縦より2センチ短い長方形」と書かれている場合、文章を読み、横の長さを計算し、それぞれの数字を図へ対応させる必要があります。
文章の理解、計算、図形への書き込みを同時に行うため、どの段階で間違えたのか本人にもわからなくなることがあります。
文章へ線を引く、縦と横を別の色で囲む、数字を図へ移す作業を一つずつ行うと、負担を減らせます。
文章題を整理する順番
- 何の形か確認する
- わかっている長さへ線を引く
- 図の対応する場所へ数字を書く
- まだわからない部分を確認する
- 必要な式を一つだけ立てる
立体や展開図を想像できない
展開図や見取り図では、平面に描かれた情報から立体を想像する必要があります。
向かい合う面を答える、見えない辺を考える、積み木の個数を数えるといった課題は、実物がないと難しい子もいます。
わからない状態で同じプリントを繰り返しても、「展開図は苦手」という気持ちが強くなるだけの場合があります。
空き箱を開く、紙の展開図を折る、透明なケースを観察する、積み木を実際に積むなど、実物と図を何度も対応させましょう。

え、そうだったの〜?プリントを10枚追加するより、お菓子の箱を開いた方がわかりやすいこともあるのね!

実物を触ると、平面と立体のつながりが見えやすいわん!ただし中のお菓子を全部食べる必要はないわん!
発達障害で図形が苦手な子への教え方7選
図形が苦手な子には、「もっとよく見て」「何度も解けばわかる」と促すだけでなく、理解しやすい入口を用意することが大切です。
本人がどこで困っているかに合わせて、次の方法を組み合わせてみましょう。
1.実物を触ってから図へつなげる
紙の上だけで理解しにくい子には、積み木、折り紙、粘土、空き箱、パズルなどを使います。
三角形を二つ合わせて四角形を作る、長方形を対角線で切る、箱を開いて展開図を確認するなど、形の変化を手で確かめましょう。
実物を触った後に、同じ状態を写真や図で見せると、「今触った物がプリントではこう表される」というつながりを作れます。
実物から図、図から記号へと、少しずつ抽象的な表現へ移ることがポイントです。
2.色や番号で見る場所を整理する
図形の中に情報が多いと混乱する子には、必要な部分だけを色分けします。
平行な辺を同じ色にする、底辺を青、高さを赤にする、対応する頂点へ同じ番号を付けるなど、関係を目で追いやすくしましょう。
ただし、色を増やしすぎると、かえって情報量が多くなります。最初は2色程度に絞るのがおすすめです。
問題用紙が混み合っている場合は、今解いている一問以外を白い紙で隠す方法もあります。
3.解き方を短い手順に分ける
問題を見ると何から始めればよいかわからない子には、解き方を短い手順へ分けます。
たとえば、面積の文章題なら「形を見る」「数字を書く」「底辺を探す」「高さを探す」「式を書く」という順番です。
手順は口頭だけで伝えず、カードや付箋へ書いて机に置くと、自分で確認できます。
図形を支える7つの方法
- 実物を触ってから図を見る
- 必要な辺や角を色分けする
- 解き方を短い手順へ分ける
- 図形を実際に切る・折る・回す
- 方眼紙や点つなぎを活用する
- 描く以外の回答方法も認める
- できた過程を具体的に褒める
4つ目は、図形を実際に切る・折る・回すことです。頭の中だけで動かさず、カードや紙を手元で操作できるようにします。
5つ目は、方眼紙や点つなぎを使うことです。線を引く場所が明確になり、目と手を連動させる負担を減らせます。
6つ目は、描く以外の回答方法も使うことです。選択肢から選ぶ、図形カードを置く、口頭で説明する方法なら、理解できていることを示せる子もいます。
7つ目は、結果ではなく過程を具体的に褒めることです。「全部正解したね」だけでなく、「底辺と高さを自分で色分けできたね」と、使えた方法を認めましょう。

よーし!箱を開いて、折り紙を切って、色も塗って……図形の授業というより工作大会になってきたわ!

工作しながら理解できるなら大成功だわん!プリントだけが勉強じゃないわん!
発達障害で図形が苦手な子を学校へ相談する目安
家庭で工夫しても強い困りごとが続く場合は、担任へ相談しましょう。
相談する目的は、診断名を付けてもらうことではなく、子どもが学習内容を理解しやすい方法を学校と共有することです。
図形だけ極端に成績が下がる場合
計算や数の理解はできているのに、図形単元だけ極端に点数が下がる場合は、解答の過程を確認しましょう。
形の名前がわからないのか、問題文を読み違えているのか、作図がずれているのか、立体を想像できないのかによって支援は変わります。
テストの点数だけを見せて「復習させてください」と伝えるより、家庭で気づいた具体的な様子を共有すると、先生も観察しやすくなります。
ほかの学習や生活にも困りごとがある場合
図形の苦手さに加えて、次のような様子が複数の場面で続く場合は、担任、特別支援教育コーディネーター、スクールカウンセラーなどへ相談してもよいでしょう。
- 板書の位置を見失いやすい
- 文字や図を正確に写すことが極端に難しい
- 地図や座席表の位置関係がわかりにくい
- 左右や前後などの指示で混乱する
- 定規、コンパス、はさみの操作が難しい
- 文章題の条件を整理できない
- 本人が算数を強く嫌がり、自信を失っている
これらに当てはまるからといって、必ず発達障害や学習障害であるとは限りません。
一方で、本人の努力だけでは解決しにくい困難があるなら、早めに学び方を調整することで、失敗経験の積み重なりを減らせます。
学校で相談できる具体的な配慮
学校では、子どもの実態に合わせて、教材の提示方法や課題量などを調整できる場合があります。
相談できる支援の例
- 図形を切ったり動かしたりできる教材を使う
- 問題を一問ずつ提示する
- 必要な辺や角へ色を付ける
- 作業の手順表を机に置く
- 方眼紙や補助線入りの用紙を使う
- タブレットで図形を回転させる
- 口頭や選択式でも理解を確認する
すべてを一度に求める必要はありません。家庭で効果のあった方法を一つ伝え、授業でも試せるか相談すると話が進みやすくなります。

「図形が苦手です」だけじゃなくて、「紙を回すとわかります」まで伝えればいいのね。そっか、安心した〜。

できる条件を共有するのが大事だわん。苦手の報告だけでなく、成功した方法も先生へ渡すわん!
発達障害で図形が苦手な子への対応まとめ
発達障害のある子どもが図形を苦手に感じる背景には、形や位置関係の捉えにくさ、頭の中で図形を動かす難しさ、注意の向け方、手先の操作など、さまざまな要因があります。
ただし、図形が苦手という一つの特徴だけで、発達障害や学習障害と判断することはできません。
まずは、「図形が全部苦手」とまとめず、形の名前、位置関係、回転、作図、文章題、立体など、どの段階で困っているかを確認しましょう。
同じプリントを繰り返すことだけが、図形を理解する方法ではありません。
実物を触る、図形を動かす、色を付ける、手順を分けるなど、その子が理解しやすい入口を探すことが大切です。
できない部分だけを見るのではなく、「実物ならわかった」「選択肢なら答えられた」という成功を拾い、家庭と学校で共有していきましょう。

図形が苦手なんじゃなくて、紙の上だけだとわかりにくかったのかも。なるほど!これなら私にも手伝えそう♪

その調子だわん!苦手を責めるより、わかる方法を一緒に増やしていくわん!



コメント