「軽度の知的障害なら、成長すれば同年代に追いつくことはある?」
「幼児期に知的障害と言われたけれど、治った子もいるの?」
「発達検査の数値が上がれば、もう知的障害ではない?」
子どもの発達について知的障害の可能性を伝えられると、親は大きなショックを受けます。
特に軽度や中度と説明された場合は、「まだ小さいから追いつくかもしれない」「療育を頑張れば治るかもしれない」と期待することもあるでしょう。
その一方で、期待しすぎてはいけないのか、将来をどう考えればよいのか分からず、不安になる方も少なくありません。
先に結論をお伝えすると、知的障害は、風邪のように治療によって完全に「治る」と表現するものではありません。
ただし、子どもは成長します。
言葉が増える、身の回りのことができる、集団に参加できる、読み書きや計算を覚えるなど、できることが大きく増える可能性はあります。
また、幼児期の発達検査は、その日の体調、検査への慣れ、言葉の理解、集中力などの影響を受けます。
再検査によって数値や評価が変わり、診断や支援の必要性が見直されるケースもあります。
つまり、「知的障害が治った」というより、発達が進んだ、検査で力を出せるようになった、生活上の困りごとが減った、最初の評価が見直されたと考える方が正確です。
この記事では、軽度・中度の知的障害が同年代に追いつく可能性、「治った」と言われる理由、発達検査の見方、療育や家庭でできること、就学先を考える時のポイントまで解説します。

療育に毎日通えば、ある日グラフがグーンと伸びて「知的障害、卒業です!」ってなるのかと思ってたの…。

卒業式のように線を引けるものではないよ。でも、支援によってできることや過ごしやすさが増える可能性は十分にあるんだ。
軽度・中度の知的障害はいつ追いつく?「治った」の本当の意味

知的障害は、知能検査の数値だけで判断されるものではありません。
考える、理解する、覚えるといった知的機能に加えて、コミュニケーション、社会生活、身辺自立などの日常生活への適応も含めて判断されます。
そのため、発達検査で一度低い数値が出たからといって、その数字だけで子どもの将来がすべて決まるわけではありません。
反対に、検査の数値が上がったからといって、生活上の支援がすぐに不要になるとも限りません。
知的障害は知能指数だけでは判断しない
知的障害について調べると、「IQ70未満」「軽度はIQ50から69」「中度はIQ35から49」といった情報を見ることがあります。
しかし、実際の診断や支援の判断では、検査の数値だけを見るわけではありません。
同じような数値でも、一人で着替えられる子もいれば、細かい手順の支援が必要な子もいます。
言葉で気持ちを伝えられる子もいれば、絵や身振りを使った方が伝えやすい子もいます。
また、知的機能の得意不得意にも個人差があります。
目で見た情報は理解しやすいけれど、言葉だけの説明は分かりにくい。
一度覚えた手順は得意だけれど、予定の変更には対応しにくい。
日常会話はできるけれど、抽象的な言葉や複雑な説明を理解することが難しい。
このように、子どもの力は一つの数字だけでは表せません。
「軽度だから困りごとも軽い」「中度だから何もできない」という理解も正しくありません。
軽度の場合、幼児期には遅れが目立ちにくく、小学校で学習内容が難しくなってから困りごとが表れることがあります。
中度の場合でも、本人に合った方法で繰り返し練習することで、身辺自立やコミュニケーションなど多くの力を身につける可能性があります。
追いつくとは何に追いつくことなのか
「同年代に追いついてほしい」と願うことは、親として自然な気持ちです。
ただし、「追いつく」という言葉には、いくつかの意味が混ざっています。
これらは同じことではありません。
たとえば、発達検査の数値が知的障害の基準から外れても、読み書きや集団生活に支援が必要な場合があります。
反対に、検査上は知的障害の範囲にあっても、慣れた生活の中では自分でできることが多く、周囲と穏やかに生活できる人もいます。
大切なのは、同年代との差だけを見ることではありません。
昨日までできなかったことができるようになったか。
本人が困った時に伝えられるようになったか。
家庭や園、学校で安心して過ごせる時間が増えたか。
こうした実生活の変化も、子どもの大切な成長です。

わたし、平均の線ばっかり見てたかも…。昨日できなかった靴下を、今日は片方だけ自分で履けたのに。

片方は立派な前進だよ。平均との距離だけでなく、その子自身の変化を見ることが支援の出発点なんだ。
「治った」と言われるケースで起きていること
インターネットや知人の話で、「知的障害が治った」「療育で普通になった」という体験談を目にすることがあります。
ただし、その言葉だけでは、実際に何が変わったのかは分かりません。
「治った」と表現される背景には、次のようなケースが考えられます。
特に幼い子どもは、発達の個人差が大きい時期です。
初めての場所で固まる、知らない人の指示に応じられない、発語が少なく答えを表現できないなど、本来持っている力を検査で十分に示せないことがあります。
その後、言葉や対人関係が育ち、検査に慣れることで、結果が変わることがあります。
一方で、一度よい数値が出たからといって、それまでの支援を急にすべて外してよいとは限りません。
数値だけでなく、家庭、園、学校での様子を継続して確認することが大切です。
軽度・中度の知的障害はいつ追いつく?「治った」と感じる理由

子どもの発達は、すべての力が同じ速さで伸びるわけではありません。
言葉がゆっくりでも運動は得意な子、身辺自立は進んでいても集団指示が分かりにくい子など、発達にはばらつきがあります。
成長の途中で得意な力が伸びると、以前より遅れが目立ちにくくなることがあります。
幼児期の発達検査は結果が変動することがある
発達検査や知能検査は、子どもの能力を理解するための大切な手がかりです。
しかし、身長や体重のように、いつ測っても全く同じ結果になるものではありません。
検査を受けた日の睡眠、体調、空腹、不安、集中力などによって、取り組み方が変わることがあります。
また、問題の意味は分かっていても、言葉で答えることが苦手で点につながらない場合もあります。
そのため、検査結果を見る時は、総合的な数値だけでなく、どの課題が得意だったか、どの場面で力を出しにくかったかも確認しましょう。
検査を担当した心理士や医師に、「この数値をどう受け止めればよいですか」「生活の中で何を支援すればよいですか」と尋ねることが大切です。
環境が合うことで本来の力を出しやすくなる
子どもの困りごとは、本人の能力だけで決まるものではありません。
周囲の伝え方や環境が変わることで、できる行動が増えることがあります。
たとえば、言葉だけの説明では動けなかった子が、写真や絵で予定を見せると一人で準備できるようになることがあります。
一度に三つの指示を出すと混乱する子も、「ランドセルを置く」「手を洗う」と一つずつ伝えると行動できる場合があります。
これは、急に障害がなくなったということではありません。
子どもが理解しやすい環境になり、持っている力を使えるようになったと考えられます。
力を発揮しやすくする工夫
・指示は短く一つずつ伝える
・写真、絵、実物を使って見せる
・始まりと終わりを分かりやすくする
・毎日の手順をできるだけそろえる
・難しい課題を小さな段階に分ける
・できた直後に具体的に認める
・疲れる前に休憩を入れる
・苦手な感覚刺激を減らす
環境調整によって困りごとが減ると、周囲からは「普通にできるようになった」「治ったように見える」と感じられることがあります。
しかし、本人が見えないところで強く頑張っている可能性もあります。
できるようになった行動だけでなく、疲れや不安が増えていないかも見守りましょう。



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