「何度教えても計算が身につかない…」
「九九を1ヶ月練習しても覚えられない」
「算数のテストだけ極端に点数が低くて、どうすればいいか…」
そんな悩みを抱えているあなたへ。お子さんは「怠けている」のでも「努力が足りない」のでもないかもしれません。

「算数障害」という言葉を聞いたことがありますか?学習障害(LD)のひとつで、知的な発達に問題がないにもかかわらず、計算や数の概念を理解することが著しく難しい状態のことをいいます。
この記事では、算数障害(ディスカリキュリア)の基本的な知識から、特徴・チェックリスト、他の発達特性との関係、家庭でできる具体的なサポート方法、二次障害へのリスクまで、わかりやすく解説します。
「もしかしてうちの子も?」と感じているなら、ぜひ最後まで読んでみてください。
算数障害(ディスカリキュリア)とは何か。まず基本を知ろう

こんにちは!親子の相談窓口、おやまどの鈴木です。
まずは「算数障害とは何か」を正しく理解するところから始めましょう。正しく知ることが、お子さんへの適切なサポートの第一歩になります。
算数障害とは。LD(学習障害)のひとつで「努力不足」ではない

算数障害(ディスカリキュリア)は、LD(学習障害・限局性学習症)のひとつです。文部科学省が定義する学習障害のうち、「計算する」「推論する」能力に著しい困難が生じる状態を指します。
大切なのは、算数障害は知的発達の問題ではないということです。国語や理科・社会などは普通に学べているのに、算数だけが極端に苦手——そういった状態の子どもが該当する場合があります。

うちの子、国語は普通にできるのに算数だけ全然ダメで…正直「やる気がないだけ」って思ってたかも…

「国語はできるのに算数だけ」というのがまさに算数障害の特徴だわん!やる気や努力とは別の話で、脳の情報処理の仕方に違いがあることがあるわん!
算数障害はいつ気づかれる?小学校でつまずくパターン

算数障害は、就学前には気づかれにくく、小学校に入って算数の授業が始まってから発覚するケースが多いです。特に気づかれやすいタイミングは次の通りです。
| 時期 | つまずきやすいポイント |
|---|---|
| 小学1〜2年生 | 足し算・引き算の繰り上がり・繰り下がりでつまずく。指を使わないと計算できない |
| 小学2〜3年生 | 九九がなかなか覚えられない。掛け算の意味が理解しにくい |
| 小学3〜4年生(9歳の壁) | 抽象的な文章題・筆算・割り算で一気に困難が顕在化しやすい |
| 小学5〜6年生 | 分数・小数・面積など概念の理解が難しくなる |
特に9歳頃(小学3〜4年生)は、算数が急に抽象的・複雑になる時期で、それまで何とかついていた子どもが急に追いつけなくなり「算数障害かもしれない」と気づかれるケースが増えます。
「算数が苦手」と「算数障害」の違い。どこから障害になる?

「うちの子は算数が苦手なだけで、障害というわけじゃないのでは…」と思う方も多いと思います。一般的な「算数が苦手」と「算数障害」の違いをまとめました。
| 算数が苦手な子 | 算数障害の可能性がある子 | |
|---|---|---|
| 理解のしやすさ | 繰り返し説明すれば理解できる | 何度説明しても概念が定着しにくい |
| 他教科との差 | 全体的にやや苦手 | 算数だけが極端に他教科より低い |
| 日常生活 | 買い物の計算などは大体できる | 日常的な数の扱いにも支障が出やすい |
| 練習の効果 | 繰り返しで改善しやすい | 練習しても定着しにくいことが多い |
もちろんグレーゾーン(境界線上)の子どもも多く、どちらとも言い切れないケースも少なくありません。「もしかして」と感じたら、専門家に相談することが一番の近道です。
算数障害の特徴とチェックリスト。うちの子は当てはまる?

算数障害の特徴は子どもによってさまざまです。「計算全般が苦手」な場合もあれば、「暗算はできるけど筆算ができない」「文章題だけが極端に苦手」など、部分的な困難として現れることもあります。
算数障害のチェックリスト。気になる項目はいくつある?

以下のチェックリストを参考にしてみてください。あくまで参考であり、いくつ当てはまったから何かが決まるわけではありません。
【数の概念・数え方】
✓ 数を数えるとき、指を使わないと難しい(小学2年以降も続く)
✓ 数の大きさ・多さのイメージがつかみにくい(3と300の違いが感覚的にわからない)
✓ 「3個」と「3番目」の違いが混乱しやすい
✓ 数字を読むのに時間がかかる、読み間違いが多い
【計算・演算】
✓ 繰り上がり・繰り下がりの計算が定着しない
✓ 九九を何ヶ月練習しても覚えられない
✓ 計算の手順(筆算など)を覚えても次にはまた忘れる
✓ 計算に極端に時間がかかる(他の問題の3〜5倍以上)
✓ 暗算は難しいが、表や図があれば理解できることがある
【文章題・推論】
✓ 文章を読んで「何を求めるのか」がわからない
✓ 式は立てられても計算でつまずく(またはその逆)
✓ 時計の読み方・時間の計算が極端に苦手
✓ お金のやり取り・おつりの計算が難しい
✓ 長さ・重さ・かさなどの単位の感覚がつかみにくい
【日常生活・全体的な様子】
✓ 算数の授業・テストになると著しくパニックになる・嫌がる
✓ 「どうせ自分は算数ができない」という強い自己否定がある
✓ 他の教科の成績は平均的なのに算数だけ極端に低い
✓ 算数の宿題に毎日1〜2時間以上かかる
算数障害のタイプ別の特徴。一部だけ苦手な場合もある

算数障害は「計算が全部苦手」ではなく、「どこにつまずくか」は子どもによって異なります。大きく分けると次のようなタイプが見られることがあります。
| タイプ | 苦手なこと | 比較的できること |
|---|---|---|
| 数概念の弱さ | 「量」としての数がわからない。指で数えないと計算できない | 順番(序数)はわかる場合がある |
| 計算手順の弱さ | 筆算の手順を覚えにくい。毎回同じミスをする | 暗算や概算が得意な場合がある |
| 文章題の弱さ | 問題の意味を理解して式に落とし込むのが難しい | 単純な計算問題は解ける場合がある |
| 記憶・暗記の弱さ | 九九・公式が覚えられない。覚えてもすぐ忘れる | 理解はしているが記憶の保持が難しい |
「九九は全然覚えられないけど、文章の意味はよくわかる」「計算は遅いけど、図形の問題は得意」という子も多くいます。「算数が全部できない」わけではなく、どこにつまずきがあるかを見つけることが大切です。
算数障害とADHD・ASD・ディスレクシアの重なり合い

算数障害は単独で現れることもありますが、他の発達特性と重なって現れることもよくあります。

うちの子、計算式は合ってるのに数字を書き間違えて×になること多くて…あれも特性が関係してることがあるの?

あるわん!書字の難しさやADHDの特性が絡んで「書くとき」にミスが増えることがあるわん。「理解はしているのに書くとき間違える」は算数の概念の問題とは別で捉えることが大事だわん!
算数障害の子どもへのサポート方法。家庭と学校でできること

算数障害に「治療法」はありませんが、その子に合った学び方・環境・ツールを整えることで、困りごとを大幅に減らすことができます。「算数ができないから終わり」ではなく、アプローチを変えることが大切です。
①視覚化・具体物を使う。抽象的な数を「見える化」する

算数障害の子どもが苦手とするのは「数の抽象的な概念」です。「3」という数字が頭の中で「量」として具体的にイメージできないため、計算につまずく場合があります。これを補うのが「視覚化・具体化」です。
「暗記させる」より「見てわかる」環境を整えることが、算数障害の子どもへの支援の基本です。九九が覚えられなくても、表があれば解ける——それで十分な場合もあります。
②計算機・ツールの活用を担任に相談する

「計算そのもの」が苦手な子どもに対し、計算以外の思考力・推論力を伸ばすために計算機や電卓の使用を認めてもらえるよう、担任の先生に相談することができます。
「ずるい」という感覚を持つ方もいるかもしれませんが、眼鏡が必要な子に眼鏡を使わせるのと同じように、算数障害の子どもにとって計算補助ツールは「学ぶための合理的な配慮」です。
担任の先生に伝えるときのポイント
✓「計算そのものより、問題の意味を理解する力を伸ばしたい」と伝える
✓「九九表を手元に置かせてほしい」「時計の絵を手元に置いてよいか」など具体的にお願いする
✓「提出は頑張ったところまでで受け取ってほしい」と相談する
✓ 特別支援コーディネーターや通級指導教室について聞いてみる
③スモールステップで「できた!」体験を積み重ねる

算数障害の子どもは、「できない・間違える」経験が積み重なることで強い自己否定感・算数への恐怖心を持ちやすくなります。これを防ぐために、意図的に「できた!」という成功体験を作ることがとても大切です。
④興味のあるものと算数を組み合わせる

「算数=嫌なもの」という印象を少しでも緩和するために、子どもが好きなものや興味があることに算数を組み合わせるアプローチが効果的な場合があります。
好きなものと組み合わせた算数の例
✓ ゲームが好き → キャラクターのHP・スコアで足し算・引き算
✓ 食べ物が好き → 「りんご2個と3個を合わせると?」で計算練習
✓ 乗り物が好き → 電車の時刻・駅の数で時間の計算
✓ お菓子が好き → お小遣いで買い物の練習(おつりの計算)
✓ スポーツが好き → 試合のスコア・選手の記録で計算

うちの子、電車が大好きなの!時刻表を使った計算、楽しんでくれそう!

それ最高だわん!「楽しい」と思える瞬間が一番学習の入り口になるわん。算数の問題じゃなく「電車の話」から入ると抵抗がぐっと下がることがあるわん!
⑤通級指導教室・発達障害専門の支援機関を活用する

家庭でのサポートには限界があります。学校内の通級指導教室や外部の発達障害専門の支援機関を活用することも、とても大切な選択肢です。
算数障害でやってはいけないNG対応。二次障害を防ぐために知っておくこと

正しいサポートと同じくらい大切なのが「やってしまいがちだけど逆効果になる対応」を知っておくことです。特に算数障害では、適切でない関わりが「二次障害」につながるリスクがあります。
「努力が足りない」という誤解が子どもを傷つける理由

算数障害は外見からはわかりません。そのため「やれば絶対できる」「練習が足りないだけ」と誤解されやすい障害です。その誤解から来る言葉が、子どもを深く傷つけることがあります。
これらの言葉や対応が積み重なると、子どもが「どうせ自分はダメだ」という強い自己否定感を持つようになり、最終的にうつや不登校などの二次障害につながる可能性があります。
算数障害と二次障害。放置するリスクを知っておこう

算数障害の困難さを「怠け・努力不足」と捉え、適切なサポートなしに放置すると、次のような二次障害につながることがあります。
算数障害が気になるなら。診断・相談の流れを知っておこう

「もしかして算数障害かも」と感じたとき、どう動けばいいか迷う方も多いです。診断が必要かどうかより先に、「まず話を聞いてもらう」ところから始めましょう。
| 相談先 | 特徴 |
|---|---|
| かかりつけ小児科 | まず気になることを話してみる最初の窓口。必要に応じて専門機関を紹介してもらえる |
| 学校の特別支援コーディネーター | 学校での様子を踏まえた相談ができる。通級指導の利用につながることも |
| 発達障害者支援センター | 各都道府県にある無料相談窓口。学習の困難についても相談可能 |
| 児童精神科・小児神経科 | 専門的な診断・知能検査(WISCなど)が受けられる |
「診断を受けたら何かが決まってしまう」という不安もあるかもしれませんが、相談や診断はあくまで「子どもをよりよく理解するため」のツールです。診断の有無に関わらず、その子に合ったサポートを見つけることが目的です。
まとめ。算数障害は「努力不足」ではない。正しく理解して一緒に歩もう

最後に、一番大切なことをお伝えします。
算数障害は「やる気がない」のでも「親の教え方が悪い」のでもありません。脳の情報処理の特性として生じるものです。
でも、その特性を正しく理解して、その子に合ったアプローチを見つければ、「算数が少しわかるようになった」「自信が戻ってきた」という変化が生まれることがあります。

「やる気がない」じゃなかったんだ…まず九九表を手元に置いてあげることと、電車のスコアで計算してみることから始めてみる!先生にも話してみようと思う

完璧!ひとつずつ試していけばいいわん。一番大切なのは「できた!」を一緒に喜ぶことだわん。ほのママ、その気持ちがもう最高のサポートだわん!



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